オォオォオ――……。
　近未来を連想させる景観内を流線型のオブジェが忙しなく活動中だ。
　悠久の宇宙空間に広がる星々の営みを幾乗にも倍速化したかの様だ。
「俺は王子だ……三銃士を……ロックの加勢に向かわないと」
「まぁ慌てないで。ジャスティン義兄さま」
　忙しなく辺りを見渡すジュンを横目にカミュがマイペースで講ずる。
「王国は最新の科学技術の粋を結集させて近代化を図ったんだけどぉ」
「――予期せぬ諸々の問題が？」
　開発やその実用化には当然、未知のトラブルが起こりうるのは必定。
「義兄さまってば結構呑み込み早いねー。相手が博識だと助かるよっ」
「……それ、暗に自分の家臣を貶めてないか……」
　横並びに歩調を合わせながら、ジュンは金髪少女にジト眼を向ける。
「”ジオフロント”建造にかなりの労働力を注ぎ込んだの」
「……だからか……兵力が手薄だったのは……」
　国防を蔑ろに――グランドラ王国は鉄壁の地下要塞を建造していた。
「ほら。空に大仰なアイアンドーム作るのって、効率悪いっしょ？」
「……確かに一理ある。地下に丸ごと建造した方が効率的ではある」
　戦闘や非常事態の際、隕石や核クラスの脅威に備える事は理に適う。
「国防の要ってつまり核シェルターだと思わない？」
「……あぁ」
　地下なら巨大隕石の衝突や魔物の襲来、軍事攻撃にも耐え得る――。
「だが、……地上への出入り口を封鎖されてしまえば……袋の鼠では？」
「網の目状に続く海底トンネル、及び出入口を世界中に連結済みなら？」
「……海底トンネルをッ。……世界中に……？」
「海底都市、知ってる？　あれって実はさ、王国の中継都市なんだよね」
「は……はは。有り得ないだろ……？」
　歯切れ良いカミュの講釈を聞く最中、目の前がくらくらとしてきた。
　悪ふざけで言っているのでは無い様だが……どうにも現実味が無い。