コツ―ン、コツ―ン――……。
下階へとぐるぐる続く薄暗い螺旋回廊内を、靴底の音が打ち鳴らす。
石壁と石畳で象られた螺旋状の回廊だ。内観を壁掛けの燭台が灯す。
「……さっきは嬉しかった。ほんとだよ?」
「……さっきって……何時?」
束の間の静寂を、カミュの声音が破る。先導しながら粛々と続ける。
「あの四神魔のレディから、ぁたしを命懸けで護ろうとしたでしょ?」
四神魔――。興味が湧かない。魔王の親衛隊みたいなものだろうか。
「あぁ……だっけな」
別に大した活躍はしていない。ハッタリを利かせただけの事である。
ただ、ジャスティンと交わした男の約束を――破りたくはなかった。
「……俺は何もしてないよ」
「うぅん。そんな事ない。とても頼りになってるんだから」
「……」
前方をリズミカルに降りる金髪少女の背中が、……愛美にダブった。
「……で、何時になったら目的地に到着するんだ?」
「ぅんっ。もちょっとだよ!」
自信たっぷりで闊達な返事に、ジュンはほっと安堵の吐息を漏らす。
不意に連れてこられた秘密の隠し通路――何を見せたいのだろうか。
ズズゥゥ――……ン。ぎゃぁぁああああ――……。
上階では、相変わらず地響き。そして魔物の咆哮、兵士たちの悲鳴。
「なぁカミュ。王国はいいのか? このままじゃ……」
悠長に探検ごっこをしている場合ではないのは、カミュも承知の筈。
「相変わらず優しいね義兄さまは。ご指摘どーもっ♪」
ファサ――。
片手が上品に金髪をかきあげる。カミュの青い眼が背後を一瞥した。
「あのね、義兄さま」
スゥゥ――……。
深呼吸するとカミュは口角をにたっとつりあげ、ジュンを揶揄した。
「”戦略的撤退”ってゆー用語、知ってますかあ?」
「……ん?」
悪戯っぽい光を宿した好戦的な眼差しに、ジュンは黙然と対応する。
「戦況に応じてリソースを再配分するって事だろ?」
「ふーん……」
ピタと歩調を止めると、澄んだ青い目が凝っとジュンを覗き込んだ。
「ん、何だ?」
「ぁーいや。ちょっとねー♪」
いそいそと向き直ると、金髪少女は再度、止めていた歩調を進めた。
下階へとぐるぐる続く薄暗い螺旋回廊内を、靴底の音が打ち鳴らす。
石壁と石畳で象られた螺旋状の回廊だ。内観を壁掛けの燭台が灯す。
「……さっきは嬉しかった。ほんとだよ?」
「……さっきって……何時?」
束の間の静寂を、カミュの声音が破る。先導しながら粛々と続ける。
「あの四神魔のレディから、ぁたしを命懸けで護ろうとしたでしょ?」
四神魔――。興味が湧かない。魔王の親衛隊みたいなものだろうか。
「あぁ……だっけな」
別に大した活躍はしていない。ハッタリを利かせただけの事である。
ただ、ジャスティンと交わした男の約束を――破りたくはなかった。
「……俺は何もしてないよ」
「うぅん。そんな事ない。とても頼りになってるんだから」
「……」
前方をリズミカルに降りる金髪少女の背中が、……愛美にダブった。
「……で、何時になったら目的地に到着するんだ?」
「ぅんっ。もちょっとだよ!」
自信たっぷりで闊達な返事に、ジュンはほっと安堵の吐息を漏らす。
不意に連れてこられた秘密の隠し通路――何を見せたいのだろうか。
ズズゥゥ――……ン。ぎゃぁぁああああ――……。
上階では、相変わらず地響き。そして魔物の咆哮、兵士たちの悲鳴。
「なぁカミュ。王国はいいのか? このままじゃ……」
悠長に探検ごっこをしている場合ではないのは、カミュも承知の筈。
「相変わらず優しいね義兄さまは。ご指摘どーもっ♪」
ファサ――。
片手が上品に金髪をかきあげる。カミュの青い眼が背後を一瞥した。
「あのね、義兄さま」
スゥゥ――……。
深呼吸するとカミュは口角をにたっとつりあげ、ジュンを揶揄した。
「”戦略的撤退”ってゆー用語、知ってますかあ?」
「……ん?」
悪戯っぽい光を宿した好戦的な眼差しに、ジュンは黙然と対応する。
「戦況に応じてリソースを再配分するって事だろ?」
「ふーん……」
ピタと歩調を止めると、澄んだ青い目が凝っとジュンを覗き込んだ。
「ん、何だ?」
「ぁーいや。ちょっとねー♪」
いそいそと向き直ると、金髪少女は再度、止めていた歩調を進めた。

