ぎゃぁあああ――……。
 城の外部では、魔物と思しき奇っ怪な咆哮が大気を鳴動させている。
 爆音がそこかしこで轟き、兵隊と思しき喚声と悲鳴が上がっている。
「……」
 ジャスティンは、王国が魔王の総攻撃に晒されていると言っていた。
 であれば――……今まさに魔王ルシファーが陣頭指揮を執っている?
 転生早々ではあるが、今が当に決着をつけるチャンスでもある――。
「ロック、まだかッ」
 カミュの見守る中、ジュンは大扉の前で悪戦苦闘する家臣を急かす。
「俺の部屋へとっとと案内しろッ」
「ふぅ……はぁ……王子部屋へ?」
 閂を操作する手を一時的に止め、細身の男が深呼吸して息を整える。
「何それ? 防御城塔(バークフリー)へ急ぐんじゃないの?」
「いや、俺の部屋が先だッ」
 ジャスティンは、王子部屋のクローゼットに秘密を残したと言った。
 兎に角それがあれば何とかなる……そんな確信めいた予感があった。
「しかし……内鍵がどうにも……ッ」
「ロック、他に迂回ルートは?」
「義兄さまっ、礼拝堂ルートならどお?」
「礼拝堂……ルート?」
 ロックが沈鬱な面持ちで言葉を濁す。何か訳ありとでも言いたげだ。
「カミュ王女、お言葉ですが確かそのルートは……」
「よしカミュ、それで決まりだ」
「ぅ……ぅんっ」
「は? 正気ですか?」
 取り合えずカミュの提案に同調するジュン、ロックの表情が強張る。