タタタ――。
 外部の喧噪を他所に、薄暗い非常通路を真っ直ぐひた走る三体の影。
 通路の奥付近で足が止まる。頑強な大扉で行き止まりになっていた。
「……んだよ、これ」
「くッ……内鍵が? 誰の仕業だッ」
 ガチャガチャと閂を抉じ開け様とするが、鋼鉄製の大扉は動じない。
「何? 開かないの?」
 ジュンとカミュが心配そうに見守る中、ロックは閂と格闘している。
「駄目だ……内鍵だッ……内側から……鍵が……ッ」
「そんなっ」
「……チッ」
 ロックの装備を検める。背に担いだ弓矢――。狙撃タイプの銃士か。
 とすれば、パワータイプに打開して貰うのが良策ではあろうか――。
「ロック、シェインかレムに助けを呼ぶのは?」
 中腰で背後を振り仰ぎながら、ロックが必死の形相で状況を講ずる。
「シェインは城門(ゲート)、レムは石壁(カーテン)に出張った」
「つまり……他にまともな戦力はいないと?」
「……くッ」
 ガンッ! 苦虫を噛み潰しながらロックが閂を荒々しくぶっ叩いた。
「ちょっと義兄さま……そんな言い方って……」
「事実だ。カミュ。現実をちゃんと見ろ。この王国――」
 侮蔑も顕にロックを見下ろしながら、ジュンは無愛想に言い放った。
「――国防すらまともに機能していない、欠陥王国、って事だろ」
「ちょっと待ってよ! そんな言い方って、あんまりだと思うっ」
 怒りも顕に突っかかるカミュを、ジュンの冷めた眼差しが見据える。
「お前もお前だカミュ。変なパーティとか頭のイカれた小太りハゲとか」
「まともな兵隊だっているわよっ! 何よ、ぁたしの国バカにしてっ!」
「シェインだっけか? どーみたってアレはゴリラかチンパンの類だろ」
「あーっ! またバカにしたぁーっ! もー許さないってか許せないっ」
「止めぬかお二人ともッ! およし下されぇえッ!」
 一触即発の剣呑なる空気を諫めるべく、雄叫びを張り上げるロック。