カチ、カチ――。どれだけの時が経っただろう。数秒かもしれない。
 ズゥ――……ン。重々しい地響きと共に城内全域が間断なく揺れる。
「……そっちだッ」
「……迎撃しろ!」
 ぎゃぁぁあああ……。外部を満たす悲鳴と奇怪な咆哮が大きくなる。
「義兄……さま?」
 カミュの不安げな声が、ジュンの意識を喧噪の只中へと引き戻した。
「……」
 意識が徐々に戻ってきた。朧だった焦点がゆっくりと結像してゆく。
「あぁ……」
 頭を軽く横に振る。気を取り直すと、口元に微笑を浮かべて見せた。
「俺は大丈夫だよ」
「っ。義兄さまっ」
 ぱぁ――っ。曙光の様な眩しさが、安堵するカミュの美貌を彩った。
「……嬉しいっ」
「大丈夫だ。心配ないよ」
 ぎゅっと抱きつくカミュの金髪ツーテールを、そっと優しく撫でる。 
 例え異世界であろうと、か弱き者を放って逃げるなど出来なかった。
「ご無事ですかッ!」
 タタターーッ。
 励まし合うジュン達のもとに駆け寄り、細身の男が声を張り上げる。
「お二方ッ。居城(パラス)から城塔(バークフリー)へと急いで!」
 タッ――。手招きしながら先導するロックが非常通路へ走ってゆく。
「行こう、カミュ」
「あ、ぅ、ぅんっ」
 ガタン――。意を決して席を立つと、ジュンはカミュの手を引いた。