わぁぁ――。城門(ゲートハウス)近辺で喚声があがっている。
 シーン……。
 熱狂的なお祭りムードだったホールは束の間の静謐に包まれた。
「……」
「……っ」
 急場に慣れていないのか、縮こまった家臣達は微動だにしない。
「カミュ、今のは?」
「ぇ……な、なに?」
 理解不能といった面持ちで、カミュが青い眼をパチパチさせる。
 何かに脅える様は、不測の事態に全く対処しきれていない様だ。
「シェイン。レムと迎撃準備を」
「……ぅす」
 ガタン――。
 椅子を立つ二人の男。事態を察した僅かばかりの家臣達が動く。
 タタっ。駆けつけてきた橙色のオカッパ少女と話し込んでいる。
「……」
 事態を把握すべく周囲を一望するジュン。一様に沈黙している。
 特設ステージを独占していたオッサンなる小太り男の姿も無い。
 ――もしかしたら、陣頭指揮を執っている最中なのやもしれぬ。
 ギギギィィ……――バタンッ!!
 正面扉がゆっくり大きく開き、手負いの兵士が倒れ込んで来た。
「て……敵集……、モンスターの……軍勢が…………ッ」
 壊れた甲冑を着込んだ息も絶え絶えの手負いの兵士が事切れた。
「……っ」
「……!」
 ざわ、ざわ……。
 眼に飛び込んで来た惨状が、熱の覚めた家臣達を凍り付かせる。

 わっ――。場を満たしていた異質な沈黙が、パニックに変わる。
「待て、俺だッ!」
「いいや俺が先だッ」
 わぁぁああっ――……。
 一目散に逃げ出す輩が多い中、その場に硬直して動けない者も。
「ひ、久方ぶりの実戦だッ」
「う、腕が鳴るぜ……ッ」
 携えた武器を手に、恐る恐る門外へ飛び出してゆく勇者もいる。 
「えぇい落ち着けッ! 皆、落ち着かぬかッ!」
 すっかり混乱の坩堝と化したホール内に、ロックの叱責が響く。