おぉおぉお……。場内を満たすどよめきが、一際大きくなった。
「ファイヤーっ!」
「――ッ?」
 突然の奇っ怪な咆哮に、びっくりして特設ステージを見やると。
「ひのいのコラボ―っ!」
「んだよ……あのオッサン……」
 驚愕に眼を丸くするジュンの視線が、オッサンに釘付けになる。
 力強い雄叫びとは裏腹な脱力系パラパラダンスを披露していた。
「あ、ファイっ♪ ファイっ♪」
 黒色のブリーフを履いた奇抜な風体でボテ腹をブヨらせている。
「……芸人さんか何かなのかな」
「きゃはははっ。うっけるぅーっ!」
 げんなりするジュンの傍らで、カミュが黄色い笑い声を上げる。
 ぎゃぁぁあああ――……。
 時等しくして、城外と思しき遠方の方で甲高い悲鳴があがった。
「? ――今のッ」
 はっとして周囲を見渡すが、特に気に留める者はいないようだ。
 わいわい。ざわざわ……。
 和やかムードの喧騒の中、家臣は酒と談笑に夢中になっている。
「――ッ!?」
 手についと触れた温かな感触がジュンの身をギョッと竦ませた。
「ふふっ♪」
 ぎゅうーっ。
 引っ張られたジュンの掌が、カミュの太腿へと押し当てられた。
「……何の真似だ?」
 コイツ頭大丈夫か? 常識的な疑念を抱くも、お手上げに近い。
「だいじょーぶ♪ こんだけ酒が回ればね♪ 誰も気にしないって」
「……は?」
 覗き込んだ金髪少女の青い目が、悪戯っ子の様に微笑っている。
 朝っぱらから周囲はバカ騒ぎ。まるでハプニング・バーの様だ。
「ふふっ♪ 知りたい? 私のひ・み・つ」
「……!?」
 クスクス……。
 対面から漏れる笑い声に顔を上げると、二人の男と目が合った。
「なんだよ、……お前ら?」
「王子ぃ~」
 ガタタ――。
 身を乗り出すと、口に手を添えた細身の男が小声で囁きかける。
「今宵はキングサイズの特注ベッドをご用意致しますぞ」
「ぐふ、ぐふふふ」
 申し合わせた様に含み笑いながら、大男がすきっ歯を光らせる。
「……おい」
 悪ノリを加速させる二人の男にジュンの怒りがピークに達する。
「お前らな……無礼講にも程が――」
 悪ふざける家臣を正気に戻すべくテーブルを叩きかけたその時。
 ズズズズ……、ドン――ッ!!
 不意の衝撃に城内全域が揺れる。直後、爆音が大気を震わせた。