「……ん」
「ほらよ、しっかりしろ」
グ――。
地べたに腹ばいのアリエスの手を引っ掴み、立たせる。当面無事な様だ。
「ぁ。ありがと。もぉ大丈夫みたい……。はぁびっくりしたー」
「つッても、何がどーなッたンだよ? サッパリ解んねーぞ?」
どうやら胸を鷲掴みにされた快感で、アリエスは一瞬気をヤったらしい。
どういう機序でそんな状態に陥るかは不明だが、ヘヴン状態になる様だ。
「……ッ」
ザぁ――……。何時だったろうか。過去の懐かしい会話が脳裏を過った。
「ぁたし胸が弱点だからっ、解った?」
「弱点? ……胸が? お前の頭が?」
「んーっとぉ。陥没してるって事っ!」
「……は? 胸が、陥没してるのか?」
過去に、陥没だとは本人から聞いた事があったがこれほど弱かったとは。

何がどう陥没してるか意味が解らなかった。尋ねる気も起きなかったが。
「ちょっとぉ聞いてないんですけどっ。卑怯過ぎるぅ~っ」
「すまないアリエス。安田達も気が立っていたんだと思う」
消沈する安田を庇い、代わりに詫びるジュン。アリエスは御立腹の様だ。
「美少女にいきなり来るってさぁ~ほんっと酷くないっ?」
頬を赤らめて言われても説得力に欠ける。何がどう酷いのかも解らない。
まぁ、満更でもなさそうな所から察するに、意外と良かったのかも――。
「で、実際、何があったんだ? 説明しなきゃ解らんぞ?」
「ふーんだっ。知~らないっ! もーやんないかンね~っ」
どうも背後から胸を鷲掴まれた様だが、事の詳細に関しては不明のまま。
意外とサッパリしてる様子から、アクシデントには慣れているとみえる。
「しっかし安田ぁ、お前もお前だぞ? ッとに大丈夫か?」
ジュンに促され、狼狽える素振りをみせながらも、ニヤけ顔の安田――。
「ご、御免ねアリエスちゃん。掴んでいいってゆーからぁ」
「るっさい黙れっ! もー絶っっ対に許さないんだからっ」
「は、はは……。ぼ、ボク、嫌われちゃったかなぁ~……」
ニヤけ口調で嘯きながら、牙を剥くアリエスからこっそりと距離を取る。
「そう言わんと、嬢ちゃん。安田も悪気はないんじゃけぇ」
――にかっ。
引き攣った笑みを殊更に強張らせ、猫撫で声を発しながら援護する下洗。
「るっさいぁんたに言ってないっ! 眼鏡に言ってンのっ」
アリエスが反抗的な眼を頭頂部に注ぎながら、侮蔑も顕わに吐き捨てた。
「まーでも最初にハゲ相手じゃなくて良かった。な~んて」
「ぁあ? おどれェそないにワシを小馬鹿にしたいんかッ」
――ビキビキッ!
途端にこめかみをビキつかせる下洗。怒りも顕にアリエスににじり寄る。
「したくないってば。オッサン被害妄想過ぎンじゃない?」
「だぁーーーッッ!! こんのドチビィイイーーッッ!!」
ギャーギャー。
再度、口喧嘩が勃発。百キロ超級を相手取り、一歩も引かないアリエス。
ドドドド――……。ぐるるる……。がるるる……。
薄暗い回廊を踏み鳴らす群衆の靴音。猛獣の様な唸り声が近づいてくる。
「来よったぁッ! 嬢ちゃん、早うワシを運んでェなッ!」
途端に弱腰になる下洗。アリエスに縋り付くも、あっさりスルーされる。
「るっさいポンコツのラーメン親父っ! 誰が運ぶかあっ」
「ッ。ンのドチビィ~ッ! 減らず口が減らんのぉ~ッ!」
――チャキッ。
言い争いを他所に、ジュンは異形の群れを迎撃すべく銃掴を握り締める。
「……ッ」
避難先である駅前の状況も不明だ。アリエスは信用できるだろうか――。
恐らくジャッカルとレディが居るのだろうが交戦中である可能性が高い。

駅前広場――。
ぎゃぁぁあああ――……。うわぁぁあああ――……。
騒然と荒み果てたコンコース内部は、逃げ惑う市民でごった返していた。
「ゾンビだッ! そこら中に居るぞぉッ!!」
「警備隊は……、救助隊はまだなのかぁッ?」
おぉおぉお――……。
返り血を浴びた通路は深紅に染まり、一帯に屍の山が積み重なっている。
「ぐぁああぅうああッ!」
「がるるるるぁああっ!」
ドドドドドド――……。
噛まれた市民は片っ端からゾンビ化。捕まった市民は臓腑から喰われる。
地獄絵図の様な光景を、上空の宙から俯瞰しつつ溜飲を下げる男が居た。
「クックックッ――」
冥府の王ハデス。嘗てジャイアントインパクトで星の侵略を企んだ一人。
煌びやかな祭服を身に纏い、威厳の象徴であるワンドを手に携えている。
グルルルル――……。
地獄の番犬三つ首のケルベロスは現在、駆け付けた重力使いと交戦中だ。

「はぁあッ」
ドゥ――ッ。
放った重力弾が俊敏な動きで躱される。スピードは魔獣の方が上の様だ。
「グギャルルル――ッ!」
トッ、トッ――。
軽快な身のこなしで屋外へ跳び出した魔獣が円盤状の大屋根に駆け上る。
メキィ――。集成材に爪を喰い込ませ、数トンもの重量を器用に支える。
キィィィイイ――……。――ゴォオオッ!!
大口を交互に開き、炎、氷、レーザー、各属性の技が一斉に放出された。
「っ!」
ドガァッ! 屋根を突き破り、コンコース中央通りが焦土と化してゆく。
「義姉さんッ!」
「ッとぉ、お前の相手は俺だぞッ!」
「チィッ」
――ザンッ! 袈裟懸けに振り下ろされた巨爪が、黒い靄を切り裂いた。
ヒュォォォ――……。
星々瞬く夜空の下、スタジアムに面した大屋根の天蓋上で対峙する二人。
「……ほぅ。俺の攻撃を躱すとはな」
――シャキンッ。
伸びた巨大な鉤爪を引っ込め、首を気怠げに回す男はバッカス。狼男だ。
伸縮自在な身体と変身能力、強靭な外骨格と勝負勘を兼ね備えた異星人。
ジャイアントインパクトの決戦時、早川梢に討伐された苦い過去を持つ。
「男らしく降参しな、バッカス。邪魔してッとよぉ、ミンチだぜ……ッ」
キシィ――ッ。キリリリリ――……。
黒ジャケットの両裾から伸びたリールワイヤが、既に相手を攻略済みだ。
バッカスの周囲を覆った極細のチタンワイヤが、敵の動きを封じている。
「……成る程、流石は悪魔王。……油断は即刻、命取りって訳かい……」
オォオォオ――……。
コキッ――。首を気怠げに回し、ワイヤの煌めきに眼を眇めるバッカス。

オォオォオ――……。
重力レンズを利した神霊結界サンタマリア・デフォーレで攻撃を無効化。
が、予想外に体力の消耗が激しい。別の仕掛けが発動してる恐れがある。
「……」
リィン――……。
グラビティサーチで神霊力を補足するレディ。相手の兵力数は、……四。
察知できるだけでも、これだけの敵数。未確認の敵が居る可能性もある。
「……くっ」
焦燥を募らせるレディ。頼みのアリエスとジュンの到着が予定より遅い。
ジャッカルは足止めを喰っている最中だ。多勢に無勢、敗北は必至――。
「おやぁ、余所見していて良いのかな?」
クッ、クッ、クッ――。
罪なき大衆を死霊と化し、扇動せしめた張本人、ハデスが哄笑を立てる。
「……おのれ、ハデスっ!」
「ギャォオオオーーッ!!」
――バリィンッ!!
大屋根ドームを突き破って、高度数十Mもの天蓋から魔獣が降ってくる。
「ッ。……ちぃ――っ!」
「グギャァアアアッ!!」
キン、キン……、……――ゴォオッッ!!
上空から発射された三属性のエネルギー砲撃が、レディに襲いかかった。

「ほらよ、しっかりしろ」
グ――。
地べたに腹ばいのアリエスの手を引っ掴み、立たせる。当面無事な様だ。
「ぁ。ありがと。もぉ大丈夫みたい……。はぁびっくりしたー」
「つッても、何がどーなッたンだよ? サッパリ解んねーぞ?」
どうやら胸を鷲掴みにされた快感で、アリエスは一瞬気をヤったらしい。
どういう機序でそんな状態に陥るかは不明だが、ヘヴン状態になる様だ。
「……ッ」
ザぁ――……。何時だったろうか。過去の懐かしい会話が脳裏を過った。
「ぁたし胸が弱点だからっ、解った?」
「弱点? ……胸が? お前の頭が?」
「んーっとぉ。陥没してるって事っ!」
「……は? 胸が、陥没してるのか?」
過去に、陥没だとは本人から聞いた事があったがこれほど弱かったとは。

何がどう陥没してるか意味が解らなかった。尋ねる気も起きなかったが。
「ちょっとぉ聞いてないんですけどっ。卑怯過ぎるぅ~っ」
「すまないアリエス。安田達も気が立っていたんだと思う」
消沈する安田を庇い、代わりに詫びるジュン。アリエスは御立腹の様だ。
「美少女にいきなり来るってさぁ~ほんっと酷くないっ?」
頬を赤らめて言われても説得力に欠ける。何がどう酷いのかも解らない。
まぁ、満更でもなさそうな所から察するに、意外と良かったのかも――。
「で、実際、何があったんだ? 説明しなきゃ解らんぞ?」
「ふーんだっ。知~らないっ! もーやんないかンね~っ」
どうも背後から胸を鷲掴まれた様だが、事の詳細に関しては不明のまま。
意外とサッパリしてる様子から、アクシデントには慣れているとみえる。
「しっかし安田ぁ、お前もお前だぞ? ッとに大丈夫か?」
ジュンに促され、狼狽える素振りをみせながらも、ニヤけ顔の安田――。
「ご、御免ねアリエスちゃん。掴んでいいってゆーからぁ」
「るっさい黙れっ! もー絶っっ対に許さないんだからっ」
「は、はは……。ぼ、ボク、嫌われちゃったかなぁ~……」
ニヤけ口調で嘯きながら、牙を剥くアリエスからこっそりと距離を取る。
「そう言わんと、嬢ちゃん。安田も悪気はないんじゃけぇ」
――にかっ。
引き攣った笑みを殊更に強張らせ、猫撫で声を発しながら援護する下洗。
「るっさいぁんたに言ってないっ! 眼鏡に言ってンのっ」
アリエスが反抗的な眼を頭頂部に注ぎながら、侮蔑も顕わに吐き捨てた。
「まーでも最初にハゲ相手じゃなくて良かった。な~んて」
「ぁあ? おどれェそないにワシを小馬鹿にしたいんかッ」
――ビキビキッ!
途端にこめかみをビキつかせる下洗。怒りも顕にアリエスににじり寄る。
「したくないってば。オッサン被害妄想過ぎンじゃない?」
「だぁーーーッッ!! こんのドチビィイイーーッッ!!」
ギャーギャー。
再度、口喧嘩が勃発。百キロ超級を相手取り、一歩も引かないアリエス。
ドドドド――……。ぐるるる……。がるるる……。
薄暗い回廊を踏み鳴らす群衆の靴音。猛獣の様な唸り声が近づいてくる。
「来よったぁッ! 嬢ちゃん、早うワシを運んでェなッ!」
途端に弱腰になる下洗。アリエスに縋り付くも、あっさりスルーされる。
「るっさいポンコツのラーメン親父っ! 誰が運ぶかあっ」
「ッ。ンのドチビィ~ッ! 減らず口が減らんのぉ~ッ!」
――チャキッ。
言い争いを他所に、ジュンは異形の群れを迎撃すべく銃掴を握り締める。
「……ッ」
避難先である駅前の状況も不明だ。アリエスは信用できるだろうか――。
恐らくジャッカルとレディが居るのだろうが交戦中である可能性が高い。

駅前広場――。
ぎゃぁぁあああ――……。うわぁぁあああ――……。
騒然と荒み果てたコンコース内部は、逃げ惑う市民でごった返していた。
「ゾンビだッ! そこら中に居るぞぉッ!!」
「警備隊は……、救助隊はまだなのかぁッ?」
おぉおぉお――……。
返り血を浴びた通路は深紅に染まり、一帯に屍の山が積み重なっている。
「ぐぁああぅうああッ!」
「がるるるるぁああっ!」
ドドドドドド――……。
噛まれた市民は片っ端からゾンビ化。捕まった市民は臓腑から喰われる。
地獄絵図の様な光景を、上空の宙から俯瞰しつつ溜飲を下げる男が居た。
「クックックッ――」
冥府の王ハデス。嘗てジャイアントインパクトで星の侵略を企んだ一人。
煌びやかな祭服を身に纏い、威厳の象徴であるワンドを手に携えている。
グルルルル――……。
地獄の番犬三つ首のケルベロスは現在、駆け付けた重力使いと交戦中だ。

「はぁあッ」
ドゥ――ッ。
放った重力弾が俊敏な動きで躱される。スピードは魔獣の方が上の様だ。
「グギャルルル――ッ!」
トッ、トッ――。
軽快な身のこなしで屋外へ跳び出した魔獣が円盤状の大屋根に駆け上る。
メキィ――。集成材に爪を喰い込ませ、数トンもの重量を器用に支える。
キィィィイイ――……。――ゴォオオッ!!
大口を交互に開き、炎、氷、レーザー、各属性の技が一斉に放出された。
「っ!」
ドガァッ! 屋根を突き破り、コンコース中央通りが焦土と化してゆく。
「義姉さんッ!」
「ッとぉ、お前の相手は俺だぞッ!」
「チィッ」
――ザンッ! 袈裟懸けに振り下ろされた巨爪が、黒い靄を切り裂いた。
ヒュォォォ――……。
星々瞬く夜空の下、スタジアムに面した大屋根の天蓋上で対峙する二人。
「……ほぅ。俺の攻撃を躱すとはな」
――シャキンッ。
伸びた巨大な鉤爪を引っ込め、首を気怠げに回す男はバッカス。狼男だ。
伸縮自在な身体と変身能力、強靭な外骨格と勝負勘を兼ね備えた異星人。
ジャイアントインパクトの決戦時、早川梢に討伐された苦い過去を持つ。
「男らしく降参しな、バッカス。邪魔してッとよぉ、ミンチだぜ……ッ」
キシィ――ッ。キリリリリ――……。
黒ジャケットの両裾から伸びたリールワイヤが、既に相手を攻略済みだ。
バッカスの周囲を覆った極細のチタンワイヤが、敵の動きを封じている。
「……成る程、流石は悪魔王。……油断は即刻、命取りって訳かい……」
オォオォオ――……。
コキッ――。首を気怠げに回し、ワイヤの煌めきに眼を眇めるバッカス。

オォオォオ――……。
重力レンズを利した神霊結界サンタマリア・デフォーレで攻撃を無効化。
が、予想外に体力の消耗が激しい。別の仕掛けが発動してる恐れがある。
「……」
リィン――……。
グラビティサーチで神霊力を補足するレディ。相手の兵力数は、……四。
察知できるだけでも、これだけの敵数。未確認の敵が居る可能性もある。
「……くっ」
焦燥を募らせるレディ。頼みのアリエスとジュンの到着が予定より遅い。
ジャッカルは足止めを喰っている最中だ。多勢に無勢、敗北は必至――。
「おやぁ、余所見していて良いのかな?」
クッ、クッ、クッ――。
罪なき大衆を死霊と化し、扇動せしめた張本人、ハデスが哄笑を立てる。
「……おのれ、ハデスっ!」
「ギャォオオオーーッ!!」
――バリィンッ!!
大屋根ドームを突き破って、高度数十Mもの天蓋から魔獣が降ってくる。
「ッ。……ちぃ――っ!」
「グギャァアアアッ!!」
キン、キン……、……――ゴォオッッ!!
上空から発射された三属性のエネルギー砲撃が、レディに襲いかかった。



