Excalibur



 オォオォオ――……。
 硝煙の棚引く吹きっ晒しの屋上に、取り残される男衆が、およそ三名。
「ジュンちゃぁんっ。これからワシ等ぁどないなンじゃぁあ?」
「ジュン君っ。ボク、まだこんな所じゃ、……終われないよぅ」
「……ぅ、……ぐぐ……ッ」
 ボディブローが効いている。ジュンは直ぐに動ける状態ではなかった。
 ――がぁぁあああッ!! ぐるるるぁああああッ!!
 業炎の波及を警戒してか、集団は建屋下部に潜んで様子を窺っている。
「……ぐ、……ッ!?」
 蹲るジュンの震える眼が、フェンス網に掛かったハーケンを見つけた。
 先端から極太のロープが垂れている。ジャッカルの置き土産だろうか? 
「……おい、お前ら、……ッ!」
「何? ジュン君、何なのっ?」
「な、……どうしたんじゃあッ」
 シュザッ――。
 両手を広げた中腰で慎重に囲みつつ、ジュンの顔色を窺う安田と下洗。
「……ぅッ!?」
 逃がさない――。そう言わんばかりの二人の気迫に、たじろぐジュン。
「お、おぅ……、そこ見てみろ」
「ぁん? 何じゃフェンスぅ?」
「し、下洗先生っ! アレっ!」
「おーッ! しゃでかしたぁッ」
 ――ダダダッ。
 目ざとくハーケンを見つけた二人が、こぞってフェンス際へ駆けだす。
「ありましたっ、ハーケンっ!」
「ッしゃっ。やったで安田ぁッ」
「ひゃはっ。ぃよっしゃあっ!」
 小躍りして一頻り喜ぶと、ロープを手に、フェンスを乗り越えてゆく。
 ヒュォォ――。高高度の吹きさらしの中、慎重にロープを伝い降りる。
「押すなやッ? 絶対押すなッ」
「やだな、お、押しませんてぇ」
 オォオォオ――……。
 ふざけ合う様に声を掛け合いながらも、大胆に、下方へと降りてゆく。
「……く、……ぅぐ、ぐ……ッ」
 ――ぐるるるぁぁあああああッ!!
 ダメージが抜けず身動きの取れないジュンの傍に、群衆がにじり寄る。



 ぐるるるるる……。
 吹き飛ばされた建屋。更地と化した階段の上り口付近で、眼光が煌く。
 異形の集団が狙う先には、蹲まる人影が一体、――逃げ遅れたジュン。
「……ぐッ……」
 カタカタ――……。
 震える銃把を掴む左手に、力が入らない。ボディブローが効いている。
「押すなよッ、絶対押すなよッ!」
「わぁかってますよぅ……ぅあっ」
 ギャーギャー。
 フェンス外では早速、小競り合いが勃発中だ。だが、状況が解らない。
「……ッ!」
 ガチャン――。……ドドドドド――……ッ!!
 うっかり銃を落としてしまうジュン。集団が一気呵成に雪崩れてきた。
 ――ぐるるぁあああああッ!!
「……ぅッ」
 爆裂無反動砲が間に合わない。失意に眼を瞑るジュン。その時だった。
「――狂乱艶舞陣(サイクロン)っ!」
 キュルルルル……、――ザンッ!!
 猛烈な風切り音が急飛来し、硝煙棚引く屋上一帯を、血の海に染めた。