Excalibur



 ガラララ――……ゴン、ゴンッ。
 回廊内にうず高く積み上げられた瓦礫の山に、コンクリ片が落下する。
「……ぐるるる……」
「……がるる……ッ」
 タタタタタ――……。
 行く手を阻まれ足止めを喰った追従者たちが別ルートを迂回してゆく。
 全体的に統率の執れた行動パターンから恐らく司令塔が居るのだろう。
「……派手だよな……って。水芸は?」
「言ったでしょ? 調子が悪い、って」
「……ぉ、ぉう……。言ってたっけな」
 ギロっと睨まれ、たじろぐジュピター。何時にない気迫を感じていた。
 行方不明になって以来、久方ぶりに会った同朋は少々、変わっていた。
 見知った彼女は無口で、もう少し暗くてミステリアスな雰囲気だった。
「お前の銃って、そんなだったっけ?」
「ぇ、形? 別に変わってないけど?」
「……ぁ、そぅ。そうだったかな……」
 荷電粒子を、粒子加速器により加速し易い様に尖った形状をしている。
 だが、ジュピターの見知ったディアナの銃は、筒先がドーム状だった。
 先端が確かエネルギー増幅器になっていると本人から聞いた事がある。



「お前、……本当にディアナだよな?」
「は? ったり前じゃん! 何それー」
 ムキになって否定してくる所も、ちょっと違う。でも、外見は瓜二つ。
「わかった。信じるよ。でもいいか?」
「何よ。言いたい事があるなら言えば」
 持てる知恵を振り絞った結果、的外れな発言をしてしまうジュピター。
「ぁたいらを裏切らないって約束して」
「は? はぁ? わ、わかってるよー」
「ぅんぅん。そいじゃ、約束だぞっ!」
 にっこり笑うジュピターを他所に、空間からモールス信号が送られる。
『……お前、怪しまれてるっぽいぞ?』
 カチ、カチカチッ――……。
 これ以上怪しまれない様、ディアナはネイルチップを鳴らして応じる。
『仕方ないわ。私は失踪してた訳だし』
 カシュ、カシュカシュッ――……。
 コインを擦り合わせながら黙考する直人。ジュピターは敵になり得る。
 何れ始末しないといけないなら今――。が、ディアナの見解が不明だ。
 場合によっては、……ディアナも始末の対象となる。出来るだろうか。
(……)
 一時共闘はすれ、直人にとって人類に仇なす者は全てが処罰対象者だ。
 愛する楓との約束を忘れた訳ではない。寧ろ一時も忘れた事などない。
(……)
 今は街全体がどうも緊急事態の様子。本願成就の絶好の機会ではある。



『当面は、無難に様子見が吉って所か』
『えぇ。そうね。怪しまれない様にね』
『……了解した。早くここを離れるぞ』 
 フィ……ン――。
 両腕の銃身が掻き消えた。兵装解除したディアナが凛たる美声を張る。
「ジュピター。この場から撤退しよう」
「遅っせぇよっ! ほら、急ぐぞっ!」
 タタタ――……。
 急かすジュピターの後から追走するディアナと青い靄。その直後――。
 ――ドォンッ! ――ガァンッ!
 空一帯に反響する爆音が校内全域に轟く。屋上から聞こえてくる様だ。
「あの爆音。神霊力。……ジュンか?」
「ジュン、って……? ルシファー?」
 さり気なさを装いつつ、ディアナがやんわりとジュピターに問い質す。
「ジャイアントインパクトから星を護ろうとした、……あのバカの事?」
 現代より数万年前ほど遡った過去、一人の男が異星人に反旗を翻した。
 星の窮地に颯爽と現れて、危機が去ると久遠の眠りにつく特異な男だ。
「ぁたいってさ、宿敵のハズなのに、アイツだけは憎めねーんだよな!」
 ぁははっと屈託なく笑うジュピターにつられ、白い歯を零すディアナ。
「ぷっ。だよねっ♪」
『ッ。……チッ……』
 ギッと苦虫を噛む直人。ジュンの話題など聞きたくも話したくもない。
 あの男の絶大な神霊力は確か。だが、己の標的である事に違いはない。