
二階。シーンと静まり返った黄昏時の回廊の角で、体勢を整える二人。
「やっべーな。コレってさぁ、アイツの仕業じゃねーの?」
「……ぅん。そだね」
言葉尻を濁すディアナ。ジュピターは何やら察している様子だが……。
『……やはり、コイツ等のお仲間が絡んだ事件って訳かい』
カシュッ、カシュッ――。
直ぐ背後の空間から、コインの擦過音がモールス信号を送信してくる。
『この騒ぎ、……どうやらこの学園だけじゃなさそうだな』
「ぅぅん。街全体に、……広がってる感じがするわね……」
「ぁん? お前さー、さっきから何ブツブツ言ってンだ?」
ディアナの顔色が悪い。異変を察知し、ジュピターが疑問をぶつける。
「あ。御免ねジュピター。ちょっと身体の調子が悪くって」
「へぇー。ひょっとしてあの日とか? ほら、女の子の日」
「……ぅ~。だからぁ違うってば。勝手に決めないでよっ」
にひひと微笑うジュピターを睨み眼で咎めつつディアナが頬を染める。
「どーだか。ぁたいも先日あったぜ? 貧血でフラフラw」
「も、もぉバカっ。だからそんなんじゃ、……ひゃんっ!」
――バチン。引っ叩かれた尻肉が弾み揺れ、喉奥から嬌声が上がった。
「ぁっ? ちょ、ちょっと何すんのっ。止めてよバカっ!」
「……は? んだよ、ぁたい? ぁたいが何かしたのか?」
怒るディアナの挙動不審な態度に、小首を傾げて頭上に?を浮かべる。
様子がおかしい。まるで見えざる何者かと連絡を取っているかの様な。
「ぅ、ぅーんん……。っかしーなぁ。誰もいねーけどなー」
ごしごしと目を擦って辺りを見渡すが、眼が悪いせいか何も見えない。
眼と頭の悪さだけは、異星人の中でもジュピターは頭一つ抜けていた。

オォオォオ――……。
黄昏の回廊内を彷徨い歩く獣の様な咆哮が、……徐々に接近してくる。
「っ? おい、ディアナっ、先ずは連中を迎撃するぞっ!」
「ぁ、ぅん、そだねっ。わかったわ。任せてジュピターっ」
フィン――。ジャキィッ!
構えるディアナの両の前腕が眩く発光し、そのまま細長の銃身を纏う。
『……ッ!?』
直ぐ背後の空間に身を潜めつつ、異星人の特徴をインプットする直人。
(……今のは……?)
何をどの様に武器を具現化してるのか興味が湧いた。後で確かめたい。
どうもディアナは自分に好意的だ。気分が乗れば教えてくれるだろう。
(が、その前に……)
当座は死霊群の撃退が先だ。恐らくネクロマンサーが背後に居るハズ。

ドドドドド――……。
廊下を揺るがす地響きが急接近してくる。迎え撃つ異星人の二人――。
遠間の曲がり角付近で、見るも不気味な学生の一群がこちらに気付く。
「ぐぁぁぁ~~~ッ!」
「がるるぁぁあッ!!」
ダダダダ――……ッ。
全力疾走で走ってくる群衆の姿からは、普段の面影はほぼ残ってない。
「来たぞ、しゃあっ!」
「……っ」
バリバリ――。総身にスパークを纏うジュピター。指先から光が迸る。
「サンダーバレット!」
――ドガァッ! 指先から水平に発射された雷撃弾が群衆に炸裂した。
「まだまだ来るぞっ!」
「……分かってるよっ」
キィィイイ――……。両の腕に纏った二丁の銃身が明るく輝いてゆく。
「エナジーライガーっ」
ガチンッ。――ドゴォオッ!!
眩く染まる回廊。銃口から射出された光の帯が群れに炸裂、一掃した。
「ひゅぅ♪ いけいけディアナっ! 連射でゴーっ!」
「そのつもりだけどっ」
ドゴドゴドゴォオ――……ドガァアア――ッ!!
粒子砲の絨毯爆撃。爆轟の衝撃波を浴びた回廊内が連鎖的に砕け散る。
『……ッ!』
凄まじい破壊力に絶句する直人。未体験の威力を前に、ただ眼を瞠る。



