Excalibur

 わいわい――。
 大聖堂を彷彿とさせる広めの空間には所狭しと調度品が並び。
 林立した木製の丸テーブルには甲冑を着込んだ兵士群が座す。
 雑多な喧噪に包まれた大食堂内は活気を帯び、賑わっていた。
「……!」
「……っ」
 自由に会話や雑談に興じる人の群れは、朝礼待ちの家臣達だ。
「皆さん、遅くなりましたーっ」
 両手を大きく振りながら金髪少女がステージ上に姿を見せた。
 おぉぉおおお――。
 色めき立つ場内のそこかしこから、歓声と拍手が湧き起こる。
「待っておりましたぁっ」
「おぉ、王女様だ!」
「姫様っ。今朝もまた一段とお麗しゅう……」
 一際奇抜な風体の小太り男がつぶらな目玉をギョロつかせる。
「おっさん駄目だよ、ちょっかい出しちゃ」
「痛ッ! ……ぅぐぐ」
 隣席から橙色のおかっぱ娘に手で腿をつねられ忽ち悶絶――。
「……ッ」
 カミュの後から煌びやかな装束を纏ったジュンが顔をだすと。
 わぁぁああっ。ぱちぱちぱち――。
 満場から一斉に黄色い声援および喝采の拍手が沸き起こった。
「ジャスティン王子!」
「我らが王子の復活だっ!」
「これでグランドラも安泰だぁーっ」
 おぉおぉお――……。
 場内が割れんばかりの拍手と歓声、歓喜の雄叫びに包まれた。
「……義兄さま」
 ジュンの手を握るカミュの手に、ぎゅぅっと膂力と熱が籠る。
「……」
 こんなにも大勢の人がジャスティンの帰還を待っていた――。
「……」
 瞬間、放心状態に陥るも、――ジュンは気を引き締め直した。
 なら尚の事、自分にはこのグランドラ王国を護る責務がある。

「あぅああ……」
 ガタタ――ッ。
 特設ステージの一番上手で、二人の男が慌てて立ち上がった。
「よくぞ、よくぞ戻って参られた!」
「あぅあぅあー!」
 慇懃に会釈する男の横で、ガチムチの大男が唸り声を上げる。
「おい……大丈夫か、アイツ」
「え? 宮廷三銃士のロックとシェインだけど。なんで?」
「宮廷……三銃士……?」
 釈然としない面持ちのジュンを横目に、カミュが講釈を施す。
「細い方がロック。巨漢の男がシェイン。お友達でしょ?」
「……」
 ジュンの視線が、どうにもガチムチの大男を見据えてしまう。
 一見、誰がどう贔屓目に見ても……まともには見えなかった。
「駄目だろ、アレ」
「え? 何が……」
 ジュンの目線を追ったカミュが、口許をぴくくと痙攣させる。
「義兄さま……シェインは――」
「この国じゃ、あんな”野獣”も三銃士か。お笑いだな」
「っ! 義兄さまのバカっ!」
 ――ぱぁんっ!
 飛んできたカミュの平手がジュンの頬を豪快に張り飛ばした。