ちゅんちゅん――……。
何の変哲もないカラリと晴れた朝が来た。勉強はからっきしである。
昨夜の内容も気にはなるが、今朝にはもうどうでもよくなっていた。
「……冷えるな」
ジャー。バシャバシャ。
寝起きの洗顔が、何時もより冷たく感じる。冬の季節に入っていた。
こうも寒いと何もやる気にならない。兎に角すべてが面倒臭かった。
「……面倒ッちィな」
百キロもの遠方をパイクでの通学は、金銭的にも体力的にも限界だ。
「そう、……だよな」
タイヤをスタッドレスに替える必要があるが、気を逸してしまった。
交換するにも一定の金がかかる。法令違反で罰金刑だが仕方がない。
「ぐぅ~ぐぅ~……」
「はぁ。休むか……」
ぐぅ~っ。ぐぅ~っ。バカに喧しい寝息が玄関先まで聞こえてくる。
毛布にくるまり呑気に寝ているカミュを尻目に、勉学意欲が萎える。
が、同居人がこの調子ではサボる訳にもいかなかろう。腹を括った。
「学校、……行くか」
バサァッ――……。
壁掛けの学生服を引っ掴んでラフに羽織る。所持金は……心許ない。
ゴースト、木崎直人の件が脳裏を過る。再度の襲撃の可能性はある。
「やっぱ、要るよな」
チャキ――。手に取った銃掴が、ズッシリと心地よい重厚感を齎す。
触媒かつ霊力変換装置の機能を併せ持つ魔神器の携帯は必須だろう。
「……そうだったな」
プルルルル――……。
天界支給のカスタム携帯を取り出し、養護学校に電話を一本入れる。
『はい、もしもし?』
ダミ声のオッサンが出てきた。直感で話が長くなりそうだと感じた。
「カミュは休みます」
プッ――……。
ワン切りだが気にならない。最低限の要件は伝えたし伝わったハズ。

ガォォン――……。ガロロロ――……。
超速回転するノーマルタイヤ。高速道を爆走するカスタムハーレー。
「~♪」
口ずさむバッハの無伴奏チェロが流れる冬の景色に絶妙に調和する。
学校へ行く目的は潜伏および諜報。嘗て、ミシェットはそう言った。
が、――。
「……」
ドッドッドッド――……。
避譲車線に停めたバイクを暖機運転させながら束の間の黙考に耽る。
「やっぱ、……意味ねーな」
ガォォン――……。ガロロロ――……。
唸る排気音。間逆に方向を変えたノーマルタイヤが急回転を始める。
通う意味がない事にそこで気付き、バイクをUターンさせるジュン。
「……ッ?」
ブルルルル――……。
丁度前輪の向きを変えたタイミングで、ポケット内の端末が鳴った。
『ジュン。昨夜の事件の事、把握はしているわね?』
「え? あぁ、テレビでちょっとだけ見たけど……」
ミシェットのきびきびした声が、ノイズで時折ジャムって聞こえる。
山沿いルートの高速道。山腹の高標高で電波の届きがよくない様だ。
『それに連動した動きが、学校内で起きている様よ』
「ん? 青凛学園で? 連動した動きって、なに?」
訝しむジュンの返答を待たずして、ミシェットの明瞭な声が応ずる。
『新たに転入してきた学生が、暴れているらしいわ』
「で、調査に向かえってか……。結局そーなるのか」
『物分かりが良くて宜しい。流石私の見込んだ男ね』
「……おい……」
プッ――。一方的に要件を捲し立てて一方的に切る。基本ではある。
ジュンの反論をシャットアウトしつつ己の要望だけは伝える戦略だ。
「……行くっきゃねーか……」
アパートに戻っても特にやる事がない。嘆息交じりにバイクを戻す。
学校で学ぶのは専ら詰め込み学習だ。受験戦争に勝つ為だけの学び。
集団生活を強いて個の特性を奪い、画一化して奴隷に仕立てる教育。
「はぁ。アホかッつーの……」
ガォォンッ! ガロロロ――……。
咆哮を発するカスタムバイクが唸りをあげながら学園へと向かった。

ゴォォオオオ――……。
大松明に点火された豪壮な火柱が昼下がりの青凛学園を活気づける。
「ひゃっはぁーーーっ!」
頭のネジがブッ飛んだかの様な甲高い女の歓声が校庭に響き渡った。
「おいそこのお前ッ。お前だッ! 転入早々やらかすんじゃないッ!」
「全国ワーストの青凛学園だからって、好き勝手にも程があンだろっ」
浮足立つ風紀委員および顧問が懸命の制止活動に入るも柳に風――。
「景気づけにも一丁っ!」
ヒュゥゥゥゥ……――ドォンッ! パラララララ……。
女子生徒の足元から打ちあがった花火玉が、晴天の空を大輪で彩る。
おぉぉおお……。
白昼の打ち上げ花火に、我を忘れ見入る学園生が感嘆の声を漏らす。
「いーぞいーぞッ! もっと上げろォッ!」
「一発ぽっちじゃあ、全然足りねーぞォッ」
「しゃあッ撃って撃って撃ちまくれぇえ!」
調子づく不良集団が囃し立てる中、女子生徒は淡々と立ち上がった。
「はい終わり。もー持ってねンだよ。終了」
スタスタと校舎に引き下がる女子生徒。大松明だけが後に残された。

何の変哲もないカラリと晴れた朝が来た。勉強はからっきしである。
昨夜の内容も気にはなるが、今朝にはもうどうでもよくなっていた。
「……冷えるな」
ジャー。バシャバシャ。
寝起きの洗顔が、何時もより冷たく感じる。冬の季節に入っていた。
こうも寒いと何もやる気にならない。兎に角すべてが面倒臭かった。
「……面倒ッちィな」
百キロもの遠方をパイクでの通学は、金銭的にも体力的にも限界だ。
「そう、……だよな」
タイヤをスタッドレスに替える必要があるが、気を逸してしまった。
交換するにも一定の金がかかる。法令違反で罰金刑だが仕方がない。
「ぐぅ~ぐぅ~……」
「はぁ。休むか……」
ぐぅ~っ。ぐぅ~っ。バカに喧しい寝息が玄関先まで聞こえてくる。
毛布にくるまり呑気に寝ているカミュを尻目に、勉学意欲が萎える。
が、同居人がこの調子ではサボる訳にもいかなかろう。腹を括った。
「学校、……行くか」
バサァッ――……。
壁掛けの学生服を引っ掴んでラフに羽織る。所持金は……心許ない。
ゴースト、木崎直人の件が脳裏を過る。再度の襲撃の可能性はある。
「やっぱ、要るよな」
チャキ――。手に取った銃掴が、ズッシリと心地よい重厚感を齎す。
触媒かつ霊力変換装置の機能を併せ持つ魔神器の携帯は必須だろう。
「……そうだったな」
プルルルル――……。
天界支給のカスタム携帯を取り出し、養護学校に電話を一本入れる。
『はい、もしもし?』
ダミ声のオッサンが出てきた。直感で話が長くなりそうだと感じた。
「カミュは休みます」
プッ――……。
ワン切りだが気にならない。最低限の要件は伝えたし伝わったハズ。

ガォォン――……。ガロロロ――……。
超速回転するノーマルタイヤ。高速道を爆走するカスタムハーレー。
「~♪」
口ずさむバッハの無伴奏チェロが流れる冬の景色に絶妙に調和する。
学校へ行く目的は潜伏および諜報。嘗て、ミシェットはそう言った。
が、――。
「……」
ドッドッドッド――……。
避譲車線に停めたバイクを暖機運転させながら束の間の黙考に耽る。
「やっぱ、……意味ねーな」
ガォォン――……。ガロロロ――……。
唸る排気音。間逆に方向を変えたノーマルタイヤが急回転を始める。
通う意味がない事にそこで気付き、バイクをUターンさせるジュン。
「……ッ?」
ブルルルル――……。
丁度前輪の向きを変えたタイミングで、ポケット内の端末が鳴った。
『ジュン。昨夜の事件の事、把握はしているわね?』
「え? あぁ、テレビでちょっとだけ見たけど……」
ミシェットのきびきびした声が、ノイズで時折ジャムって聞こえる。
山沿いルートの高速道。山腹の高標高で電波の届きがよくない様だ。
『それに連動した動きが、学校内で起きている様よ』
「ん? 青凛学園で? 連動した動きって、なに?」
訝しむジュンの返答を待たずして、ミシェットの明瞭な声が応ずる。
『新たに転入してきた学生が、暴れているらしいわ』
「で、調査に向かえってか……。結局そーなるのか」
『物分かりが良くて宜しい。流石私の見込んだ男ね』
「……おい……」
プッ――。一方的に要件を捲し立てて一方的に切る。基本ではある。
ジュンの反論をシャットアウトしつつ己の要望だけは伝える戦略だ。
「……行くっきゃねーか……」
アパートに戻っても特にやる事がない。嘆息交じりにバイクを戻す。
学校で学ぶのは専ら詰め込み学習だ。受験戦争に勝つ為だけの学び。
集団生活を強いて個の特性を奪い、画一化して奴隷に仕立てる教育。
「はぁ。アホかッつーの……」
ガォォンッ! ガロロロ――……。
咆哮を発するカスタムバイクが唸りをあげながら学園へと向かった。

ゴォォオオオ――……。
大松明に点火された豪壮な火柱が昼下がりの青凛学園を活気づける。
「ひゃっはぁーーーっ!」
頭のネジがブッ飛んだかの様な甲高い女の歓声が校庭に響き渡った。
「おいそこのお前ッ。お前だッ! 転入早々やらかすんじゃないッ!」
「全国ワーストの青凛学園だからって、好き勝手にも程があンだろっ」
浮足立つ風紀委員および顧問が懸命の制止活動に入るも柳に風――。
「景気づけにも一丁っ!」
ヒュゥゥゥゥ……――ドォンッ! パラララララ……。
女子生徒の足元から打ちあがった花火玉が、晴天の空を大輪で彩る。
おぉぉおお……。
白昼の打ち上げ花火に、我を忘れ見入る学園生が感嘆の声を漏らす。
「いーぞいーぞッ! もっと上げろォッ!」
「一発ぽっちじゃあ、全然足りねーぞォッ」
「しゃあッ撃って撃って撃ちまくれぇえ!」
調子づく不良集団が囃し立てる中、女子生徒は淡々と立ち上がった。
「はい終わり。もー持ってねンだよ。終了」
スタスタと校舎に引き下がる女子生徒。大松明だけが後に残された。



