Excalibur



 ドンッ。舞踏の環の中央を突っ切るジャッカルの肩が男とぶつかる。
「ッとぉ、気ィつけろッ!」
「……」
 スパンッ、――ブシュゥ!
 噴き上がる血筋の一条。衝突された側である中年男の片耳が飛んだ。
 あんぎゃぁああ――……。
 湧き起こった中年男の痛ましい絶叫が、舞踏の喧騒でかき消される。
「……あらぁ~?」
「おや、まぁ……」
 ざわ、ざわ――……。
 蹲る中年男を傍目に、面倒事を避けようと他人事を決め込む参加者。



 まるで何事もなかったかの様にして舞踏会が華々しく進行してゆく。
「一悶着あったようだな……」
「くくッ、マナーの悪い奴だ」
 フフフ、ホホホ、ワッハッハ――……。
 耳から鮮血を飛沫かせる中年男を酒の肴に、笑い興ずるセレブの面々。
「きゅ、……救急車だッ! 怪我人が出ているッ。ほら急いでッ!」
 事態に気付いた司会役のフェリーが大慌てで救急車を要請している。
「……」
 ポーカーフェイスのジャッカルが少女の座るテーブル前に到達した。
 今は、何時頃だ――? ざわめく胸中。時間の感覚が……おかしい。
「お嬢ちゃん、良ければ一緒にどうかな?」
「……ん? オッサンが遊んでくれンの?」
 不意の誘いに瞬きをする少女。ドミノマスク越しの瞳は、――青色。
「……嫌かい?」
「別に。いーよ」
 ツィ――。
 触感に異常があった。伸ばした指先を慌てて引っ込めるジャッカル。
「……ッ!?」
「どったの?」
 不敵に嗤う少女を前に、ジャッカルの身から異様な冷汗が噴き出す。
 触れ合ったその一瞬で、知覚と五感、平衡感覚が麻痺しかけていた。
「俺じゃ、……不釣り合いかい?」
「んーそーだねェ。……かもね?」
 意味深に口角を上げる少女。カミュに酷似はしてるが、――別人だ。