Excalibur



 壮大な間取りを誇るサン宮殿の客間はイベントホール機能を兼ねる。
「温暖化の抑止には、温室効果ガスを三割程度、削減する必要が……」
「深刻な環境問題の解消の為にも、経済成長を少々抑えなくては……」
 奇抜なファッションで着飾った富裕層主体の参加者が談話を愉しむ。
「マンネリなセレブ生活にも退屈しちゃったわ~。新しい刺激ない?」
「あるリゾート施設で怪事件が起きた様だぜ。ポアロも真っ青なよぉ」
 趣味やビジネスから、国際情勢や環境問題など、世界的な問題まで。
 あらゆる分野の最新情報を持ち寄り議論する国際交流の場でもある。
「旦那ァ。ンな事言わンかて、グラム数百ドルに抑えて撒きますンで」
「原料の調達が遅れるだろッ! 加工はチャイナタウンでやるからッ」
「アホも大概にせッ。ワシとこの事務所じゃ無理言うとるじゃろがッ」
 秘密の会合と謳われるパーティで内輪の闇取引に没頭する者も居る。
「ご来場の皆様方に置かれましては、当パーティにご参加頂きまして」
 特設ステージ中央でマイクを片手に司会進行を努める男はフェリー。
 光と闇――。魑魅魍魎の犇めく裏社交パーティを仕切るイベンター。
 フェリー財団の御曹司でもありパーティの中心的役割を一手に担う。
「――光栄の極みッ。このフェリー、感謝の言葉しかありませんッ!」
 ワァ――……。特設スタッフがパーティーを台本通りに盛り上げる。
 舞台の照明演出。立体音響。ステージ配置やレイアウトも卒が無い。
「まぁ、……賑々しいねェ」
 ざわ、ざわ――……。
 テーブルの一角に厳めしい竜の紋章を設えたサーコートの男が居る。
 バチカン国タンジェロ城に布陣するウェルズリー配下十字軍の一人。
 十字軍メンバーの中でも諜報能力及び渉外能力は群を抜く成長株だ。 
 対面の椅子に腰掛ける紳士風の男は七魔人の一人、キングアドラー。
「鼠が入り込んだか……。一、二匹? 熾天使の索敵は一旦中止だな」
「いや、待てアドラー。ここは鼠と共闘って手段もある。で、誰だ?」
 束の間、意識を集中させていたアドラーがはっとして眼を見開いた。
「不味いな、……悪魔王だぜ。俺達より格上の神霊力を持った相手だ」
「……格上だろうが兵法次第じゃ持ち込める。俺達ならヤれるさ……」
 ♪。フリーダンスタイムが催されていた。参加者同士の交流の場だ。 



 ギィ、……パタンッ。後ろ手に扉を閉め、中に気配を潜り込ませる。
「義姉さん、ちょっくら行ってくらぁ」
『おい、くれぐれも浮気は厳禁だぞ?』
「……へいへい。少しは信用しろって」
 プッ。無線を切るとジャッカルは身嗜みを整え、さり気なく紛れた。
 奥行きある客間で繰り広げられるペアダンスは相方探しから始まる。
「……ん?」
 幻覚だろうか? 奥まったテーブルの一角に、靄の様な女子が居る。
 傍目には判別が困難だが、ジャッカルの慧眼には異質な姿に映った。
「カミュ? ……いや、違うな……」
 パっと見は熾天使カミュに似た容貌。ドミノマスクを着用している。
「義姉さん、熾天使の気配は……?」
『ガー。……現在の所まだ未確認だ』
 シュ、……――ボッ。
 レディからの素っ気ない返事を待たずしてジャッカルは蒸気を纏う。
「……そうかい?」
 レディは今、宮殿の外部で見張りの増援部隊を索敵、始末している。
 霊力探知で、参加者内でも一際強い神霊力の保有者を見つける作戦。
 が、手練れの保有者が神霊力の気配を消せる事実を彼女は知らない。
「……じゃあ義姉さん、また続報頼むわ」
 スゥ――……。
 異質な人物の正体を暴くべく、人目も憚らずに謎の少女に直行する。