Excalibur



 チャプ……チャプ――……。
 ゴトン。空の甲板。ゴンドラのフェッロが停船場の縁を叩いていた。
 ざわ、ざわ――……。
 マルコ広場の五つ星ホテル前の乗り場前は、人だかりが出来ていた。
 先程までカーニバルを愉しんでいた群衆の熱気は変死事件へと移行。
 犯人探しに没頭する見物人が現れる等、報道が過熱しそうな勢いだ。
「酷いな、誰の仕業だ……」
「人間業とは思えないなッ」
 ざわ、ざわ――……。
 溜め息橋の下では、雑踏を象る群衆達が嘆かわし気に手で口を覆う。
「誰が、こんな非道な事を」
「おお神よ、許し給へ……」
 群衆が見つめる無人ゴンドラの中は、夥しい血だまりと多量の肉片。
 犯人は既に逃走、目撃者の情報も無し。鑑識は迷宮案件として処理。
「きっと悪魔の仕業だわっ」
「人のやる所業とは思えぬ」
 ざわざわ……。喧騒から少し離れた石灰岩造りのファサードの堵列。
 水路から小径を抜け、アーチ門を潜り抜けた先に広がる広大な庭園。



 ザシュッ――。ズバンッ――。
 二つの人影が敷地内に居並ぶ番人を片っ端から血祭りに上げていた。
「流石の手練だ、ジャッカル」
「義姉さん程豪胆じゃねェよ」
『ギ、ガー……』
 ズゥゥ――……ン。
 褒め合う間もなく一際巨大な岩石造りのゴーレムが眼前に聳え立つ。
「魔術駆動式の岩石人形だな。俺の獲物じゃねェぞ?」
「解っている。デカい獲物は私のメインディッシュだ」
 スゥ……、――ゴパァッ!
 レディが右手を翳した直後、大音を立てゴーレムの巨体が自壊した。
 数G程のグラビティ変動であれば、レディの手腕なら瞬時に繰れる。
「~ヒュゥ♪」
 呆気ないレディの瞬殺劇を、ジャッカルが涼やかに口笛で称賛する。
「流石の技量だねェ。やっぱ義姉さん、巨匠だわぁ~」
 称賛を受け流しつつ、体勢を整えるレディ。薄闇に鋭い眼光が煌く。
「魔術師とはな、……やはり闇の眷属も紛れ込んでいるようだな」
「義姉さん、上流階層とやらの社交パーティーが始まってンぞ?」
「うむ。急ごう。参加者に熾天使が紛れ込んでいる可能性が高い」
 ス――……。静謐に包まれた庭園を抜け、闇に紛れる侵入者の二人。