
ザァァ――……。
街灯群に照らされオーシャンブルーに映えた水面をゴンドラが進む。
カーニバルの最中とみえ、街中はパレード様の演奏で賑わっていた。
鳥の仮面を被った水夫がオールを漕ぎながら下卑た笑い声を立てる。
「へっへっへ。あんた等、他所者だよな?」
「無礼者め。……招待状を持って来ている」
コロンビーナ仮面の貴族風ドレスを着込んだブロンド美女が応じた。
「連れに余計な戯言は控えて貰おうかい?」
ゴキャ――……。
両拳を組み解しつつヴォルト仮面と黒マントの軽装の男が牽制する。
「しかし……あんた等も物好きだよなぁ?」
「会合の事か? 好きで来てる訳じゃない」
「ちィと野暮用でな。用が済んだら帰るよ」
「へっへっへ。さぁて、もう直ぐ到着だよ」
ギィィ、ゴトン。樫造りのゴンドラがとある建物の一角に到達した。

額の汗を拭うと、水夫がオールを両手で持ち上げておどけてみせる。
「へっへっへ。ようこそ。悪魔の館へ!」
「……酔狂め。……着いたぞジャッカル」
「好きに暴れていんだよな、義姉さん?」
「あぁ好きにしろ。我々はどうせ客人だ」
立ち上がってゴンドラの縁に足を掛ける二人を、水夫が呼び止めた。
「ちょぉっと待ったぁ。その前にィ~?」
「……ん?」
――バリィッ!
顔を向ける二人の面前で、水夫の仮面が破れ珍獣の容姿が露になる。
魔族――。神族や人間族とは相対する存在として古より伝わる種族。
「ハッハァーッ!!」
勢いは止まらない。意気軒昂と声高なる奇声を発して追撃する怪人。
常人であれば、変身だけで容易に腰を抜かして餌食となる事は明白。
「この火山怪鳥バードン様を倒してからなあッ」
――ゴォォッ!
迫真のリアクションを執り行うバードンの嘴から炎が噴き上がった。
「バードンだとよ。……覚えてるか義姉さん?」
「失礼な質問をするなっ。歳がバレるだろっ!」
野暮ったいやり取りに毒気を抜かれ身体を硬直させる怪鳥バードン。



