Excalibur


 キンコンカンコン――……。チャイムが昼休憩の終わりを告げる。
「やべー。もーすぐ担任のハゲ洗が来ンぞ」
「何がやべぇーって、あのダミ声だよッ!」
「重低音のアレよな。どっから出してンだ」
 ざわわ――……。未だ散らかった教室内が湧き立つ喚声で賑わう。
「いい走りっぷりだったぜ、ジュン!」
「陸上部入れ。インターハイ出れンぜ」
「ったく昼間っぱらから熱ちィんだよ」
 ざわざわ――……。すっかり喧噪の渦中に放り込まれる二人の男。
「チッ。屋上行こーぜジュン」
「そのつもりだ。ジャッカル」
 ダッ――。目配せし合うと、二人は脱兎の如く部屋を走り去った。
 ダダダ――。
 並走して階段を駆け上がる二人。ジャッカルが涼しい眼を向ける。
「懐かしィよなぁ。あん時のこと思い出さねーか?」
「あぁ。……カミュの亜空間だろ? ってお前も?」
「そっ。俺も居たッつーの。レディ義姉さんもだよ」
「……ッ。そっか……」
 ジオフロントからの脱出時に、コズエとの会話で解ってはいたが。
 カミュの亜空間内に封じられていたのはジュンだけではなかった。



 ドガァンッ! 破片を散らしド派手にぶっ壊れる屋上のガラス扉。
「おい、目立つ行動止めろッてよ!」
「へッ。悪ィ。昔の癖でよ。ついな」
 ヒュォ……、トッ。男がスチールフェンスに直立姿勢で飛び乗る。
「はは。相変わらずお前ェ。高ェとこ好きだよなぁ」
「ヘッ。習性でな。誰よりも高い所が好きなだけさ」
 相変わらずキザな台詞が似合う伊達男だ。ジュンの意気も揚がる。
「久々で懐かしィけど、あんま感動的でもねーよな」
「そんなもんさ。ジュン、俺からお前に話の続きだ」
「……なんだよ」
 含蓄を込めたジャッカル独特の間。ジュンは慎重に眼を光らせる。
「例の奴さん、恐らくこの学園に入り込んでいるぜ」
「何ッ!? ……ゴーストが? 今何処ら辺だッ!」
「……ジュン……」
 ヒュォ――……。柵上で、ジャッカルが小さく両の前腕を振った。
「……くッ」
 バチィッ! ジュンの直近で火花が散った。男が呻き声を漏らす。
「ジュン、そこを退けッ!」
「……チィッ」
 バッ――。横っ飛びで場を離脱するジュン。背中はフェンス際だ。
 バチチチ――ッ! 手早いジャッカルの動作が男を完封した様だ。
「誰だ、名乗れッ!」
「……る訳ねーだろ」
「ッ? ……ぐッ!」
 バチチチ――……バリィイッ!! 青い烈火がジャッカルを襲う。 
 視認せざる何物かを伝い、石火の如くジャッカルを焼くスパーク。
「……――ぉおッ!」
 グラリ……ヒュゥウ――……。
 体勢を大きく崩したジャッカルの身体がフェンス下へ落ちてゆく。