Excalibur

 壁面に引っ提げられている、小さな装飾品が眼を惹いた。
「アレ何?」
「えーなぁにー?」
「あの壁に掛かってる奴だ」
「あーアレ? ちょっと待ってねーっ」
 たっと身を翻すと、カミュは機敏にそれを取って戻ってくる。
「あの子のこと思い出すねっ」
 カミュがあざとい挙措で舌を出す。
「……あの子?」
 そう言いかけてジュンは息を呑んだ。カミュの手中で光るペンダント。
 そっくりだった。夏祭りの時に、愛美に買ってあげたものに相違ない。
「忘れた? 黒髪をほら……こんな風にした」
 くすっと小さく微笑うと、両手で金髪ツーテールをたくし上げ束ねる。
「義兄さまってばあの娘にとても優しくて。嫉妬しちゃったんだ……」
 拗ねた様にジュンを盗み見るカミュの瞳が、……深い暗褐色に染まる。
「ぁたし……嫉妬深いのは良くない事だって、……解ってるんだけど」
 妙に気怠げな声音。明るかった声の語調が、……暗く低く変じてゆく。
 シャラ。瀟洒な音を鳴らしペンダントをおでこの高さまで持ち上げる。
「ジュンちゃんっ♪」
「――ッ!?」
 驚いた。正確に名前を言いあてられたジュンは、驚いてカミュを視る。
「……何だと?」
「ぇ? どったの義兄さま?」
「……今、お前……何て?」
「ぁん? このペンダントの呼び方。あの子がそう呼んでたっしょ?」
「あの子って……ぅッ!」
 愛美の姿が過り、はっと口を閉ざすジュン。
 昔、山ではぐれた愛美は、この異世界に転生してしまったのだろうか。
「……」
 ペンダントを眺めながら苦笑するジュン。まさか、こんな愛称を……。
「で……あの子は……今、どこ?」
「はぁ」
 カミュがやれやれとばかり嘆息する。
「やっぱりまだ病み上がりでご記憶が……?」
 金髪少女の美貌が憂えげに曇った。
「あの子、ここ来たばかり時にドラゴンに連れ去られちゃったじゃん」
「え? ……ドラゴン?」
 竜の怪物の事――? ここは怪物たちが跋扈するファンタジーの世界?