伏竜の話じゃ、邪法を扱うのは朱雀門派って連中らしい。
島の南側を仕切ってて、表向きは“医術街”なんだとか。
ちなみに伏竜が所属する青龍門派は島の東部を支配してるんだって。
まあ、それは今はいい。
夜の街を歩く伏竜の背中を、オレはジロッと睨みつけた。
伏竜もオレの視線に気づいたのか、黒髪を翻して振り返る。
「ついて来るんじゃねぇ、クソガキ」
むっかーっ!
「クソガキじゃない! 墨星だって言っただろ! 大体、お前が誰かを好きになったら、オレは泡になって消えちゃうんだ! オマエは薄情なヤツだから、見張っておかないと!」
ちなみにオレが泡になって消えた場合は、伏竜は死ななないらしい。そんな不公平、ある?
命がけで助けたオレをアッサリ忘れて(捜魂のせいっぽいけど、ホントかどうか怪しいし!)冷たく接する伏竜に、オレはずっと腹を立てていた。
けれど、伏竜はそんなオレに対して舌打ちする。
「朱雀門派は表向きこそ医療派閥だが、中身は狂った研究者の巣窟だ。そんな所に手前を連れて行けば、面倒事になるに決まってんだろうが」
「……?」
伏竜の言葉を頭の中で反芻してから、答える。
「えっと……よくわかんないけど、危ないから来るなってこと?」
「手前が死んだら俺まで道連れなんだ。当然だろ」
確かに出掛ける前、伏竜は「黄狗の家にいろ」と言っていた。
……でも、コイツのことが全然信用できなくて、結局ついてきちゃったのだ。
そんな伏竜にオレは舌を出す。
「ふーんだ! オレだって強い雄なんだ! 伏竜の手なんか借りなくても平気だい! それに、オレは白月姉ちゃんと逢うまでは海に帰らないんだからな!」
「キミには姉がいるのかね?」
「あれ? オレ、いるって言ってなかったっけ?」
背後から声がして思わず返事をしてしまう。
その直後、伏竜が「鳳雛!」と怒鳴った。
ところが、オレの背後から伸びてきた手が、いきなりオレの体を拘束した。
顔を上げると――長い赤毛をした、糸目の男が立っていた。
赤いチャイナドレスを着こなし、腰の帯から孔雀の羽根を一つ垂らしている。
優雅な振る舞いに中性的な顔立ちは伏竜とは対照的だった。
この鳳雛って男、どうやら伏竜の知り合いらしい。
でも何で拘束されてるのかわからなくて、オレはジタバタともがいた。
すると耳元で、「いけない子だね」と囁かれる。
その熱い吐息と声音に、ぞくぞくしてしまう。
途端、伏竜が声を荒げた。
「鳳雛! そいつを放せ!」
「なんだ、キミの道侶かね? 最高の霊物を伴侶に選ぶとは知恵が回るね」
何を言ってるのかわかんなかったけど、伏竜は今にも飛びかかりそうな様子で鳳雛を睨んでいる。
その間にも、鳳雛と同じ格好をした連中がオレたちを取り囲んでいた。
鳳雛が口を開く。
「朱雀門派の本拠地へ、ようこそ。伏竜に元・人魚君」
何でオレが人魚だって知ってるんだ、と問いかけるより先に、鳳雛が口を開いた。
「鳳雛も船に居たからね」
オレはハッとした。
じゃあ、こいつが伏竜に邪法をかけたのか……?
そう結びつけたオレを、鳳雛は不思議そうに見つめた。
「でも、どうして伏竜と人魚君が鳳雛らの巣窟に来ているのかね?」
まるで心当たりがないと言わんばかりの態度だ。
伏竜がついにキレた。
「ふざけるんじゃねぇ! 俺の記憶を奪ったのは手前らだろうが!」
「記憶……? ああ、捜魂のことか。でもなぜ鳳雛が危険を侵してまで伏竜君の記憶なぞ探らねばならないのか? 鳳雛はキミに興味などない。それより……」
そう言いながら、鳳雛の白い指がオレの顎をすっとつまみ、顔を上向かせた。
そしていきなり、唇に唇を合わせられたのだ。
「ん……っ!!!!」
もがいて抵抗するも、鳳雛は細身の割に力が強いのか、振りほどけない。
その間にも鳳雛の舌が口内を蹂躙し、押し戻そうとしても抵抗できない。
「や、あ……ッ」
水音がする程に激しくキスされる。
その間にも頭の芯が酔ったようにフラついてきた。
そんなオレの体を鳳雛が抱きかかえる。
「手前ッ!」
伏竜が怒鳴る。
しかし鳳雛は気にも留めないように、舌なめずりして言った。
「ふむ……。行方不明の姉人魚を捜して浅瀬を彷徨っていたところを青龍門派に捕らわれ、オークションにかけられた、と。それを伏竜君の大立ち回りで救出され、海辺で……」
その途中で伏竜が声を荒げた。
「鳳雛! そいつに捜魂を仕掛けやがったな!」
これが捜魂の一種なのかと思った。
記憶を無理矢理、引き出されて眩暈と吐き気がする。
立っていられずに崩れ落ちかけると、鳳雛に抱え上げられた。
「鳳雛が欲しいのは、元人魚の墨星だ。だが、どうやら伏竜と魂が繋がっているようだからね。キミを殺せば墨星も死んでしまうのだろう? ならば……」
鳳雛が合図を送ると、周囲の朱雀門派の人間達が伏竜を囲む。
そして鳳雛が笑った。
「伏竜を死なない程度に痛めつけ、手足を切り落として生きたまま達磨で保存すれば良い」
島の南側を仕切ってて、表向きは“医術街”なんだとか。
ちなみに伏竜が所属する青龍門派は島の東部を支配してるんだって。
まあ、それは今はいい。
夜の街を歩く伏竜の背中を、オレはジロッと睨みつけた。
伏竜もオレの視線に気づいたのか、黒髪を翻して振り返る。
「ついて来るんじゃねぇ、クソガキ」
むっかーっ!
「クソガキじゃない! 墨星だって言っただろ! 大体、お前が誰かを好きになったら、オレは泡になって消えちゃうんだ! オマエは薄情なヤツだから、見張っておかないと!」
ちなみにオレが泡になって消えた場合は、伏竜は死ななないらしい。そんな不公平、ある?
命がけで助けたオレをアッサリ忘れて(捜魂のせいっぽいけど、ホントかどうか怪しいし!)冷たく接する伏竜に、オレはずっと腹を立てていた。
けれど、伏竜はそんなオレに対して舌打ちする。
「朱雀門派は表向きこそ医療派閥だが、中身は狂った研究者の巣窟だ。そんな所に手前を連れて行けば、面倒事になるに決まってんだろうが」
「……?」
伏竜の言葉を頭の中で反芻してから、答える。
「えっと……よくわかんないけど、危ないから来るなってこと?」
「手前が死んだら俺まで道連れなんだ。当然だろ」
確かに出掛ける前、伏竜は「黄狗の家にいろ」と言っていた。
……でも、コイツのことが全然信用できなくて、結局ついてきちゃったのだ。
そんな伏竜にオレは舌を出す。
「ふーんだ! オレだって強い雄なんだ! 伏竜の手なんか借りなくても平気だい! それに、オレは白月姉ちゃんと逢うまでは海に帰らないんだからな!」
「キミには姉がいるのかね?」
「あれ? オレ、いるって言ってなかったっけ?」
背後から声がして思わず返事をしてしまう。
その直後、伏竜が「鳳雛!」と怒鳴った。
ところが、オレの背後から伸びてきた手が、いきなりオレの体を拘束した。
顔を上げると――長い赤毛をした、糸目の男が立っていた。
赤いチャイナドレスを着こなし、腰の帯から孔雀の羽根を一つ垂らしている。
優雅な振る舞いに中性的な顔立ちは伏竜とは対照的だった。
この鳳雛って男、どうやら伏竜の知り合いらしい。
でも何で拘束されてるのかわからなくて、オレはジタバタともがいた。
すると耳元で、「いけない子だね」と囁かれる。
その熱い吐息と声音に、ぞくぞくしてしまう。
途端、伏竜が声を荒げた。
「鳳雛! そいつを放せ!」
「なんだ、キミの道侶かね? 最高の霊物を伴侶に選ぶとは知恵が回るね」
何を言ってるのかわかんなかったけど、伏竜は今にも飛びかかりそうな様子で鳳雛を睨んでいる。
その間にも、鳳雛と同じ格好をした連中がオレたちを取り囲んでいた。
鳳雛が口を開く。
「朱雀門派の本拠地へ、ようこそ。伏竜に元・人魚君」
何でオレが人魚だって知ってるんだ、と問いかけるより先に、鳳雛が口を開いた。
「鳳雛も船に居たからね」
オレはハッとした。
じゃあ、こいつが伏竜に邪法をかけたのか……?
そう結びつけたオレを、鳳雛は不思議そうに見つめた。
「でも、どうして伏竜と人魚君が鳳雛らの巣窟に来ているのかね?」
まるで心当たりがないと言わんばかりの態度だ。
伏竜がついにキレた。
「ふざけるんじゃねぇ! 俺の記憶を奪ったのは手前らだろうが!」
「記憶……? ああ、捜魂のことか。でもなぜ鳳雛が危険を侵してまで伏竜君の記憶なぞ探らねばならないのか? 鳳雛はキミに興味などない。それより……」
そう言いながら、鳳雛の白い指がオレの顎をすっとつまみ、顔を上向かせた。
そしていきなり、唇に唇を合わせられたのだ。
「ん……っ!!!!」
もがいて抵抗するも、鳳雛は細身の割に力が強いのか、振りほどけない。
その間にも鳳雛の舌が口内を蹂躙し、押し戻そうとしても抵抗できない。
「や、あ……ッ」
水音がする程に激しくキスされる。
その間にも頭の芯が酔ったようにフラついてきた。
そんなオレの体を鳳雛が抱きかかえる。
「手前ッ!」
伏竜が怒鳴る。
しかし鳳雛は気にも留めないように、舌なめずりして言った。
「ふむ……。行方不明の姉人魚を捜して浅瀬を彷徨っていたところを青龍門派に捕らわれ、オークションにかけられた、と。それを伏竜君の大立ち回りで救出され、海辺で……」
その途中で伏竜が声を荒げた。
「鳳雛! そいつに捜魂を仕掛けやがったな!」
これが捜魂の一種なのかと思った。
記憶を無理矢理、引き出されて眩暈と吐き気がする。
立っていられずに崩れ落ちかけると、鳳雛に抱え上げられた。
「鳳雛が欲しいのは、元人魚の墨星だ。だが、どうやら伏竜と魂が繋がっているようだからね。キミを殺せば墨星も死んでしまうのだろう? ならば……」
鳳雛が合図を送ると、周囲の朱雀門派の人間達が伏竜を囲む。
そして鳳雛が笑った。
「伏竜を死なない程度に痛めつけ、手足を切り落として生きたまま達磨で保存すれば良い」



