ティグルも伏竜と同じく、怒りに燃えていた。
八重歯を噛みしめ、グルル……と野獣のような唸り声を上げている。
「モーシン、玄武門派にも朱雀門派にも渡さなイ! フーロンと番になったなら、フーロンも白虎門派が匿ウ! モーシンごと守ル!」
四門派の実力者同士が対峙し合う。
伏竜は剣を、ティグルが銃を構え、鳳雛と冥も術を使おうと身構える。
殺し合いが勃発すると感じたオレは、傷の痛みでフラフラしながら皆の中央に飛び出して行った。
「や、やめろよ! 伏竜もティグルもごめん! オレが決めたことなんだ! それに冥、早く伏竜の記憶を奪った奴の居所と、ねえちゃんの居場所を教えろよ! 対価だろ!」
場の空気が、少しだけ落ち着く。
ふらつくオレを伏竜が支えた。
でも、胸の焼き印を見た伏竜は悲し気に眉を寄せていて、それがオレの心に深く突き刺さった。
伏竜なら『絶対するな』って言うだろうことをオレは黙ってやってしまったんだ……。
その罪悪感は、焼き印の痛みより激しくオレの胸を灼く。
「ごめん……ごめん、伏竜……オレ……」
「……馬鹿野郎……ッ!」
謝るオレを伏竜が抱きしめる。
そこで構えを解いた冥が告げた。
「伏竜の記憶の所持者も、人魚の姉君の居所も、同じなのです。仲間面して、裏切りを重ねた危険人物は、海辺の廃工場に居を構えているのです」
◆◆◆
こうしてオレ達は冥の手配したタテに長い車に乗って、早速その工場へ向かうこととなった。
何故か冥も『商売になりそうなので、ウチもついていくのです』と、ついてきたけど。
車の中で、オレは隣りに座ってる伏竜の目を見れなかった。
勝手なことして怒ってるって思ったから……。
でも、窓の外を見ていた伏竜はオレの視線に気がつくと、ばつが悪そうに目を逸らした。
「すまねぇ……墨星を守るつもりが、墨星に守られてちゃ世話ねぇよな」
「そんな……」
そんなことないんだって、オレの勝手なんだって告げたくて、伏竜にキスを……しようとしたら、前の席の冥から『ふぁいる』っていうもので阻止された。オレのキスはファイルに奪われる。
「何すんだよ!」
オレが怒っても、冥は抑揚のない声で返す。
「契約違反なのです。貴方は玄武門派の奴隷。勝手に誰彼構わず交尾されては困るのです」
「交尾!? こんなトコで交尾までしないだろ! きっ、ききキスしようとしただけで!」
それにオレの隣りに座っていたティグルが唸る。
「モーシン、奴隷じゃなイ! ワタシ、ミンのコト、嫌いダ!」
「好き嫌いは金にならないので、ウチはどうでもいいのです」
ティグルと冥がガウガウやってる間に、冥の隣りの鳳雛が前方を指さした。
「見たまえ。そろそろ目的地だ」
目的の場所は、鉄で出来たパイプ? っていうのがいっぱい連なっていて、錆びた臭いに満ちていた。辺りは雑草がボウボウに茂ってる。
暗くて、中に入ろうとするハシゴはギシギシ軋んで、ちょっと怖い。
オレの胸の焼きゴテの傷は鳳雛が術で痛みを和らげてくれたけど、時折ズキッと痛んだ。
すると先を歩いていた伏竜が手を差し伸べる。
「ほら、掴まりな。泣き虫小僧」
「まだ泣いてないって!」
そんな憎まれ口を叩いていたけど、オレも伏竜もわかってた。
これが終わったら、伏竜とはお別れなんだって。
オレを買い戻すには、それ相応の対価が必要で、伏竜には用意できないだろうって冥が言ってた。
だから、今許されるだけの触れ合いをしていた。
伏竜の手は少し温かくて、硬い。それが切なかった。
もう、この手に抱かれることはないんだ……と思うと、離したくなかった。
しかし、それすら許さないと言わんばかりに、前方を人が取り囲む。
「伏竜! 仲間殺しの裏切者!」
「破門されてまで逆らうか!」
「殺せ! 殺せ! 殺せー!」
青龍門派の奴らだった!
なんでここまで来てるんだよ!
オレが叫ぶと、冥が「裏切者がいるからです」と、屈みこむなり、輝く陣を敷いた。
「ウチの特別サービスなのです。この陣の中に入れば、普段の力の2倍の攻撃力が出ます。伏竜と人魚は、先に行くのです」
「ど、どうして……」
オレが問いかけると、鳳雛が術の構えをとり、ティグルが双銃を取り出す。
「鳳雛も後から追いかけよう」
「モーシン! 気をつけて行ってくレ!」
そう言って皆が道を開いてくれたお陰で、オレと伏竜は先へ進めた。
この先で待ってる奴、オレ達が来るのを知ってたんだ! だから青龍門派の奴らを呼び寄せたんだな!
カンカンと靴音をたてて施設内を登っていく。
怖いはずなのに、不思議とオレの手を引いて走る伏竜のお陰で、恐怖は無かった。
そうして、最上階まで到達した。
そこに居たのは……。
八重歯を噛みしめ、グルル……と野獣のような唸り声を上げている。
「モーシン、玄武門派にも朱雀門派にも渡さなイ! フーロンと番になったなら、フーロンも白虎門派が匿ウ! モーシンごと守ル!」
四門派の実力者同士が対峙し合う。
伏竜は剣を、ティグルが銃を構え、鳳雛と冥も術を使おうと身構える。
殺し合いが勃発すると感じたオレは、傷の痛みでフラフラしながら皆の中央に飛び出して行った。
「や、やめろよ! 伏竜もティグルもごめん! オレが決めたことなんだ! それに冥、早く伏竜の記憶を奪った奴の居所と、ねえちゃんの居場所を教えろよ! 対価だろ!」
場の空気が、少しだけ落ち着く。
ふらつくオレを伏竜が支えた。
でも、胸の焼き印を見た伏竜は悲し気に眉を寄せていて、それがオレの心に深く突き刺さった。
伏竜なら『絶対するな』って言うだろうことをオレは黙ってやってしまったんだ……。
その罪悪感は、焼き印の痛みより激しくオレの胸を灼く。
「ごめん……ごめん、伏竜……オレ……」
「……馬鹿野郎……ッ!」
謝るオレを伏竜が抱きしめる。
そこで構えを解いた冥が告げた。
「伏竜の記憶の所持者も、人魚の姉君の居所も、同じなのです。仲間面して、裏切りを重ねた危険人物は、海辺の廃工場に居を構えているのです」
◆◆◆
こうしてオレ達は冥の手配したタテに長い車に乗って、早速その工場へ向かうこととなった。
何故か冥も『商売になりそうなので、ウチもついていくのです』と、ついてきたけど。
車の中で、オレは隣りに座ってる伏竜の目を見れなかった。
勝手なことして怒ってるって思ったから……。
でも、窓の外を見ていた伏竜はオレの視線に気がつくと、ばつが悪そうに目を逸らした。
「すまねぇ……墨星を守るつもりが、墨星に守られてちゃ世話ねぇよな」
「そんな……」
そんなことないんだって、オレの勝手なんだって告げたくて、伏竜にキスを……しようとしたら、前の席の冥から『ふぁいる』っていうもので阻止された。オレのキスはファイルに奪われる。
「何すんだよ!」
オレが怒っても、冥は抑揚のない声で返す。
「契約違反なのです。貴方は玄武門派の奴隷。勝手に誰彼構わず交尾されては困るのです」
「交尾!? こんなトコで交尾までしないだろ! きっ、ききキスしようとしただけで!」
それにオレの隣りに座っていたティグルが唸る。
「モーシン、奴隷じゃなイ! ワタシ、ミンのコト、嫌いダ!」
「好き嫌いは金にならないので、ウチはどうでもいいのです」
ティグルと冥がガウガウやってる間に、冥の隣りの鳳雛が前方を指さした。
「見たまえ。そろそろ目的地だ」
目的の場所は、鉄で出来たパイプ? っていうのがいっぱい連なっていて、錆びた臭いに満ちていた。辺りは雑草がボウボウに茂ってる。
暗くて、中に入ろうとするハシゴはギシギシ軋んで、ちょっと怖い。
オレの胸の焼きゴテの傷は鳳雛が術で痛みを和らげてくれたけど、時折ズキッと痛んだ。
すると先を歩いていた伏竜が手を差し伸べる。
「ほら、掴まりな。泣き虫小僧」
「まだ泣いてないって!」
そんな憎まれ口を叩いていたけど、オレも伏竜もわかってた。
これが終わったら、伏竜とはお別れなんだって。
オレを買い戻すには、それ相応の対価が必要で、伏竜には用意できないだろうって冥が言ってた。
だから、今許されるだけの触れ合いをしていた。
伏竜の手は少し温かくて、硬い。それが切なかった。
もう、この手に抱かれることはないんだ……と思うと、離したくなかった。
しかし、それすら許さないと言わんばかりに、前方を人が取り囲む。
「伏竜! 仲間殺しの裏切者!」
「破門されてまで逆らうか!」
「殺せ! 殺せ! 殺せー!」
青龍門派の奴らだった!
なんでここまで来てるんだよ!
オレが叫ぶと、冥が「裏切者がいるからです」と、屈みこむなり、輝く陣を敷いた。
「ウチの特別サービスなのです。この陣の中に入れば、普段の力の2倍の攻撃力が出ます。伏竜と人魚は、先に行くのです」
「ど、どうして……」
オレが問いかけると、鳳雛が術の構えをとり、ティグルが双銃を取り出す。
「鳳雛も後から追いかけよう」
「モーシン! 気をつけて行ってくレ!」
そう言って皆が道を開いてくれたお陰で、オレと伏竜は先へ進めた。
この先で待ってる奴、オレ達が来るのを知ってたんだ! だから青龍門派の奴らを呼び寄せたんだな!
カンカンと靴音をたてて施設内を登っていく。
怖いはずなのに、不思議とオレの手を引いて走る伏竜のお陰で、恐怖は無かった。
そうして、最上階まで到達した。
そこに居たのは……。



