闇オークションに出品された人魚のオレ、落札したマフィアに溺愛されちゃってます!? ~神海SIREN暗部界~

 しかし、そう簡単には物事は進んでくれなかった。

 玄武門派と白虎門派の縄張りの境目で、青龍門派からの刺客がきたのだ!
 刺客達は怒りも露わに手の平から剣を出す。
 そして口々に伏竜を罵った。

 「伏竜! この裏切者!」
 「死ね!」
 「薄汚い裏切者には死の制裁を!」 

 一斉に向けられる剣先。それが振り下ろされる。
 襲いかかられ、説明するヒマもなかった。
 周囲を刺客に取り囲まれ、逃げ道もない!

 伏竜の剣戟が響く。鳳雛が術を放つ。ティグルの双銃が火を吹く。
 周囲では剣の閃光や術の光、銃の火薬の臭いが満ちる。
 オレは三人に囲まれるように守られてるだけだった。歯痒い……!

 伏竜はなるべく殺さないようにしながらも、事態を説明していた。

 「俺は敵じゃねぇ! 誰かに記憶を奪われたから、取り戻しに行くだけだ! 道を開けてくれ!」

 でも、記憶を奪われたと言っても伏竜がオレを奪った事実は消えない。
 だから青龍門派の奴らは『伏竜が老大を殺し、人魚の力で組織を乗っ取ろうとしている』と考えたらしい。
 鳳雛とティグルという二人の老大と手を組んで組織の転覆をはかってるとも言われた。
 何を言っても言い訳と思われてしまう。

 刺客の数は、どんどん増えてくる。
 青龍門派は島で最も構成人数が多いらしいけど、今はそれが裏目に出ていた。
 倒しても倒しても、湧いて出るように集まって来る!
 伏竜達はオレを守る為に自由に動けず、窮屈そうだ。

 「オレのことはいいから、自由に戦ってくれよ!」

 オレが叫ぶと、伏竜が振り返らずに応えた。

 「馬鹿野郎! 手前の身も守れねぇガキがナマ言ってんじゃねぇ!」
 ぐうの音も出ない正論に落ち込んでると、鳳雛が溜息をついて伏竜に話しかける。

 「……やれやれ。殺さずに上手く足止めだけしろとは面倒なことを言う。殺してしまえば早いのに」
 「同胞だ! 絶対に殺すんじゃねえ!」

 理由なく同胞を殺すと破門になるらしい。
 つまり、伏竜は帰る場所を失うってことだ。

 伏竜は子供の頃に老大のおっちゃんに拾われ、それからずっと青龍門派で生きてきたらしい。
 実家みたいなものなのか。

 だが、じょじょに包囲網は狭まって来る。
 老大二人に青龍門派の幹部一人という状態でも『殺さずに大量の敵の足止め(オレを守りつつ)』は困難らしい。

 どうしたら……どうしたらいい!?
 オレが何処かに隠れようとしても、時既に遅しだった。
 周囲の何処にも逃げ道は無い。

 そうしていると、3メートル超はあろうかという巨体の男が出てきた。
 男は持っていた巨大な剣を横薙ぎに振りかぶる!

 流石に堪え切れずにオレ達は陣形を崩して散り散りになる中、伏竜はオレの手を引いて避けようとする。
 でも、オレは足が石に嵌って転んでしまったのだ。何やってんだよオレのアホ!

 伏竜が引き返して来て手を伸ばす中、オレの体が宙に浮く。
 巨体の男に掴み上げられたのだ。

 「止めろよ! はなせよ! ばか! 変態!」

 オレが暴れてもビクともしない。
 伏竜が声を荒げた。

 「楊(ヤン)! そいつを放せ!」
 しかし楊と呼ばれた大男はニチャニチャと下品に笑いながら舌なめずりする。
 その間にも指でオレの胴体をまさぐっていた。やめろよ! 気持ち悪い!

 「もともとコイツは青龍門派の『商品』だ。お前のモンじゃねぇだろうがよ。人魚じゃなくなってるから価値は下がったが、まだ『使い道』はある」

 ニチャアと笑う楊に、周りの青龍門派の奴らも楽し気だった。

 「楽しませてもらおうぜ」
 「こんな美形、人間じゃいねぇよ」
 「男の癖に、妙な色気がありやがる」

 そこで伏竜が激怒する。

 「ふざけんじゃねぇ! 墨星を離せ!」
 「うるせぇ! 伏竜! 前々からお前のことは気に入らなかったんだよ!」

 怒鳴る楊にオレは言い放った。

 「やめろよな! オレと伏竜は人魚の番の呪いにかかってるんだぞ! 伏竜を殺したら、オレも死んじゃうんだからな! 伏竜が死んだら、全部パアだぞ!」
 すると楊は汚らしく笑う。

 「なんだ、伏竜。既に人魚とよろしくヤッてたのか? おい、お前ら! 伏竜は殺さずに瀕死にさせとけ! 意識がなくなろうが、生きてりゃいいんだろ? なら拷問にでもかけて、監禁しときゃあいい!」

 そう言って楊はオレを掴んだまま引き帰した。
 伏竜達が遠ざかる。
 い、嫌だ……嫌だ――!!

 「伏竜!」
 「墨星!」

 手を伸ばし合うが、到底届かない距離。

 「伏竜! 伏竜――!!」

 オレはずっと、伏竜の名前を呼んでいた。
 でも伏竜達には更に刺客が襲いかかった。

 それからオレは意識を失った。楊に殴られたのだ。
 こうして、オレは楊とその手下に攫われることとなったのだった。