本当は伏竜は、宿に泊まる前に青龍門派のアジトに向かってたんだ。
でも、そこで待っていたのは歓迎ではなく、殺意だった。
青龍門派の奴らから、オレと伏竜は剣を向けられた。
『老大を裏切った伏竜!』
『のうのうと、よく顔を出せたものだ!』
『オークションの目玉まで盗んだ裏切者!』
あの船に乗っていた青龍門派の人間は、伏竜を除いて全員、死んでしまったという。
かろうじて生きていた奴は
『伏竜が人魚を盗み、老大を裏切った』
と言い残して死んだとか。
その青龍門派のボスのおっちゃんも行方不明で、鮫に食べられたみたいだ。
オレが『伏竜は誰かに後ろから刺されたんだぞ!』と叫んでも、聞いてもらえなかった。
むしろ背中の傷は逃げる時に負うものだと、伏竜が責められるハメになった。ご、ごめん!
しかも運が悪いことに伏竜は老大のおっちゃんのことも忘れていた。それは忘れすぎだろ!
……って、記憶を奪われた可能性があるんだよな。
伏竜は味方を殺すわけにもいかず、何とか全員を殺さずに剣だけ弾いたり、術で吹っ飛ばしたりして、青龍門派の縄張りをオレを連れて這う這うの体で脱出したのだ。
◆◆◆
それがあるから、島の中央の中立地帯を通ることにした。
今、泊ってる宿がそうだ。
中立地帯は黄狗のじいちゃんが居た地区であり、東西南北のどの組織にも属してない代わりに、貧富の差が激しく、治安も悪いんだって。
なんか街を歩いてたらジロジロ見られたし、変なおっさんに物陰に連れ込まれかけたけど、伏竜が締め上げてた。変なの。
そこまでを踏まえた上で、鳳雛は宿を変えようと提案してきた。
「青龍門派に命を狙われてるのなら、安宿よりセキュリティが安定したホテルの方が気分も盛り上がるだろう?」
何の気分が盛り上がるんだよとオレがブツブツ言う。
そんな中、伏竜はオレをちらりと見ると、溜息をついて鳳雛に向き合う。
「……仕方ねぇな。こいつを連れてると、町中の奴らが見てきやがる。いつ部屋に忍び込まれるか気が気じゃねぇ」
「フフ。人魚は人間離れした美貌の持ち主だからね。しかたないよ」
えーっ。褒められてるのかな~デヘヘ……と照れてると、伏竜に片腕を掴まれた。
「さっさと移動するぞ。チンタラしてんじゃねぇ」
「むっかーっ! 別にオレ、ナマコみたいに、のんびりしてないじゃん!」
ケンカしながら部屋を出る。
軋む床をわざとドカドカ踏んでやると、伏竜から怒られた。
「うるさい! 拗ねるな!」
「拗ねてないよーだ! 伏竜のバーカアーホターコ!」
それなら、さっさと移動してやるからな!
と、伏竜と鳳雛が会計をしている隙に外に飛び出した……ら、人にぶつかった。
「わわ! ごめんなさい!」
オレが慌てて謝ると、そこには身長2メートル近い凛々しい男が立っていた。
白い髪に青い瞳、褐色の肌、筋肉質な肉体は胸板も厚く、白い毛皮を身に着けている。
この男の胸に激突したらしい。
それなのに、男は全く体幹が揺らいでいない。凄い筋力だ。
男はオレを見ると、カタコトで話しかける。
「いや、ワタシも、わるかっタ……」
そう言いながら、男はオレを凝視してくる。な、何だよぉ~恥ずかしいだろぉ~。
「ナマエ」
「え?」
「オマエ、ナマエは?」
何で名前聞かれてるのかと思ったけど、そいつがあまりにも綺麗な目をしてるので、警戒心なく話しかけていた。
「墨星だけど……」
「モーシン、おぼえタ。ワタシ、ティグル。モーシン、ケッコンしてくレ」
「はあ?」
突然のプロポーズにオレが硬直していると、ティグルに手を握られた。
「モーシンより、きよらかなもの、ナイ」
一目惚れされた!?
「急に何!? いや、でもオレ男で……」
「伴侶、性別関係ナイ」
「あるだろ! それにオレ、人魚だし! ニンゲンと結婚とかムリムリ!」
と口にしてから自分の馬鹿さ加減に呆れた。
バラしてどうする!
あわあわしてるオレにティグルは強く言い切った。
「なら、守ル。モーシン、傷つけるモノから守ル……!」
抱きしめられ、どっきーん と胸が高鳴った。
地上に来てから、こんなにストレートに告白されたのって無……いや、あったな。
伏竜が「愛してる」とか言ってたけど忘れてるし!
それを思い出し、ティグルの胸板を押しのける。
「やめろよ! もうオレは男は信じないって決めてるんだ!」
「ナラ、信じてもらえるマデ、モーシンに尽くス」
「ちょ、困る困る! オレ、今、色々忙しくて……!」
「なら、ワタシ手伝う。モーシン、好きダ」
また抱きしめられた時だった。
「そいつに触るんじゃねぇ!」
宿から出てきた伏竜が手から剣を出し、ティグルに向けて構えている。
ティグルはオレを庇うように抱きしめると、伏竜を睨んだ。
「オマエ、青龍門派のフーロン! 此処でナニしてル?」
「手前には関係ねぇ! それより、そいつから手を離せ!」
激高する伏竜を無視して、ティグルがオレに問いかけてきた。
「モーシン、フーロン、仲間カ?」
「仲間っていうか……まぁ、仲間?」
「そうカ」
ティグルに解放され、ようやく収まったかな~とオレがノコノコと伏竜の元に戻ろうとする
と、急にティグルに引き戻された。何!?
「フォンチュ! ワタシの仲間、実験で殺したオトコ! ゼッタイユルサナイ! モーシンは、守ル!」
宿から出てきた鳳雛を見たティグルが鬼ギレしたのだ!
鳳雛はニコニコしていて堪えていない!
くそーっ! やっぱ鳳雛、連れてくるんじゃなかった~!
でも、そこで待っていたのは歓迎ではなく、殺意だった。
青龍門派の奴らから、オレと伏竜は剣を向けられた。
『老大を裏切った伏竜!』
『のうのうと、よく顔を出せたものだ!』
『オークションの目玉まで盗んだ裏切者!』
あの船に乗っていた青龍門派の人間は、伏竜を除いて全員、死んでしまったという。
かろうじて生きていた奴は
『伏竜が人魚を盗み、老大を裏切った』
と言い残して死んだとか。
その青龍門派のボスのおっちゃんも行方不明で、鮫に食べられたみたいだ。
オレが『伏竜は誰かに後ろから刺されたんだぞ!』と叫んでも、聞いてもらえなかった。
むしろ背中の傷は逃げる時に負うものだと、伏竜が責められるハメになった。ご、ごめん!
しかも運が悪いことに伏竜は老大のおっちゃんのことも忘れていた。それは忘れすぎだろ!
……って、記憶を奪われた可能性があるんだよな。
伏竜は味方を殺すわけにもいかず、何とか全員を殺さずに剣だけ弾いたり、術で吹っ飛ばしたりして、青龍門派の縄張りをオレを連れて這う這うの体で脱出したのだ。
◆◆◆
それがあるから、島の中央の中立地帯を通ることにした。
今、泊ってる宿がそうだ。
中立地帯は黄狗のじいちゃんが居た地区であり、東西南北のどの組織にも属してない代わりに、貧富の差が激しく、治安も悪いんだって。
なんか街を歩いてたらジロジロ見られたし、変なおっさんに物陰に連れ込まれかけたけど、伏竜が締め上げてた。変なの。
そこまでを踏まえた上で、鳳雛は宿を変えようと提案してきた。
「青龍門派に命を狙われてるのなら、安宿よりセキュリティが安定したホテルの方が気分も盛り上がるだろう?」
何の気分が盛り上がるんだよとオレがブツブツ言う。
そんな中、伏竜はオレをちらりと見ると、溜息をついて鳳雛に向き合う。
「……仕方ねぇな。こいつを連れてると、町中の奴らが見てきやがる。いつ部屋に忍び込まれるか気が気じゃねぇ」
「フフ。人魚は人間離れした美貌の持ち主だからね。しかたないよ」
えーっ。褒められてるのかな~デヘヘ……と照れてると、伏竜に片腕を掴まれた。
「さっさと移動するぞ。チンタラしてんじゃねぇ」
「むっかーっ! 別にオレ、ナマコみたいに、のんびりしてないじゃん!」
ケンカしながら部屋を出る。
軋む床をわざとドカドカ踏んでやると、伏竜から怒られた。
「うるさい! 拗ねるな!」
「拗ねてないよーだ! 伏竜のバーカアーホターコ!」
それなら、さっさと移動してやるからな!
と、伏竜と鳳雛が会計をしている隙に外に飛び出した……ら、人にぶつかった。
「わわ! ごめんなさい!」
オレが慌てて謝ると、そこには身長2メートル近い凛々しい男が立っていた。
白い髪に青い瞳、褐色の肌、筋肉質な肉体は胸板も厚く、白い毛皮を身に着けている。
この男の胸に激突したらしい。
それなのに、男は全く体幹が揺らいでいない。凄い筋力だ。
男はオレを見ると、カタコトで話しかける。
「いや、ワタシも、わるかっタ……」
そう言いながら、男はオレを凝視してくる。な、何だよぉ~恥ずかしいだろぉ~。
「ナマエ」
「え?」
「オマエ、ナマエは?」
何で名前聞かれてるのかと思ったけど、そいつがあまりにも綺麗な目をしてるので、警戒心なく話しかけていた。
「墨星だけど……」
「モーシン、おぼえタ。ワタシ、ティグル。モーシン、ケッコンしてくレ」
「はあ?」
突然のプロポーズにオレが硬直していると、ティグルに手を握られた。
「モーシンより、きよらかなもの、ナイ」
一目惚れされた!?
「急に何!? いや、でもオレ男で……」
「伴侶、性別関係ナイ」
「あるだろ! それにオレ、人魚だし! ニンゲンと結婚とかムリムリ!」
と口にしてから自分の馬鹿さ加減に呆れた。
バラしてどうする!
あわあわしてるオレにティグルは強く言い切った。
「なら、守ル。モーシン、傷つけるモノから守ル……!」
抱きしめられ、どっきーん と胸が高鳴った。
地上に来てから、こんなにストレートに告白されたのって無……いや、あったな。
伏竜が「愛してる」とか言ってたけど忘れてるし!
それを思い出し、ティグルの胸板を押しのける。
「やめろよ! もうオレは男は信じないって決めてるんだ!」
「ナラ、信じてもらえるマデ、モーシンに尽くス」
「ちょ、困る困る! オレ、今、色々忙しくて……!」
「なら、ワタシ手伝う。モーシン、好きダ」
また抱きしめられた時だった。
「そいつに触るんじゃねぇ!」
宿から出てきた伏竜が手から剣を出し、ティグルに向けて構えている。
ティグルはオレを庇うように抱きしめると、伏竜を睨んだ。
「オマエ、青龍門派のフーロン! 此処でナニしてル?」
「手前には関係ねぇ! それより、そいつから手を離せ!」
激高する伏竜を無視して、ティグルがオレに問いかけてきた。
「モーシン、フーロン、仲間カ?」
「仲間っていうか……まぁ、仲間?」
「そうカ」
ティグルに解放され、ようやく収まったかな~とオレがノコノコと伏竜の元に戻ろうとする
と、急にティグルに引き戻された。何!?
「フォンチュ! ワタシの仲間、実験で殺したオトコ! ゼッタイユルサナイ! モーシンは、守ル!」
宿から出てきた鳳雛を見たティグルが鬼ギレしたのだ!
鳳雛はニコニコしていて堪えていない!
くそーっ! やっぱ鳳雛、連れてくるんじゃなかった~!



