神海SIREN暗部界

 それからは朱雀門派の奴らが伏竜を囲み、次々に攻撃をしてくる。
 しかも朱雀門派は術が得意な集団らしく、遠距離から様々な術を仕掛けてきた。

 伏竜は手の平から召喚した剣で術を弾き、剣技だけでなく同じく術でも応戦している。

 「疾!」

 伏竜が放った術が敵を倒す。
 そこから伏竜は相手に斬りかかり、術を使う隙を与えないようにしていたけれど……何せ、敵の数が多い!

 伏竜だけなら逃げられるだろうに、何故かそうしない。
 そこまで考えて、オレは気づいた。

 オレが死ぬと自分も死んじゃうからだろう。

 でも、オレが死んで困るのは伏竜だけでなく、鳳雛も同じはずだ。
 オレは鳳雛の腕に思いっきり噛みついて暴れる。

 「……ッ!」

 鳳雛の拘束が解けてから、近くに居た朱雀門派の奴の剣を奪い取り、自身の喉元につきつけた。
 そして鳳雛らに言い放つ

 「おい! 今すぐオレと伏竜の包囲を解け! でないとオレ……、く、首切って死んじゃうからな!」

 喉にあてた刃が震える。脂汗が流れた。
 本当はそんな度胸なんて無い。
 姉ちゃんのことを捜さなきゃいけないから、死んでられない。
 でもこうして脅せば、包囲が解けるんじゃないかって思ったんだ。

 なのに……。

 鳳雛は両手を広げて笑いだした。

 「そうか! 死ぬのか! それは僥倖だ! 元人魚の死体を解剖できる機会に巡り合えるのも、これもまた幸運! 伏竜の死体も手に入るのも助かるよ! さあ、鳳雛の目の前で早く死んで見せてくれたまえ!」

 こ、こいつ……!

 伏竜が舌打ちしていた。
 そうだ、こいつら修真者である以前にマフィアなんだ。
 オレなんかの幼稚な脅しに騙されるわけがない。

 (ね、姉ちゃん……オレ、どうすれば……)

 刃を持つ手がカタカタ震える。情けないけど、涙が滲んでしまった。

 「グス……ねえちゃ……、伏竜……」

 その時、眩い光と共に伏竜の周囲の敵が吹っ飛ぶ。
 衝撃に剣を取り落としてしまったけど、その中心には淡く輝く伏竜が居た。

 「疾!」

 伏竜の術も剣技も威力が増している!
 朱雀門派の奴らが木っ端みたいに吹っ飛んで建物にぶつかり、気絶していた。
 伏竜が低い声で告げる。

 「そいつに手を出すんじゃねぇ!」

 伏竜自身も己の霊力が増している理由はわかっていないみたいだ。
 が、鳳雛だけは理解したらしい。
 嬉しそうに手を合わせた。

 「ああ! 君らは双修済みか! 肉体を重ねることで霊力を循環させるという……。
 道理で、船で見かけた時より強くなっているはずだ!」

 そう告げる鳳雛に伏竜が駆け寄り剣を振り下ろす。
 鳳雛も腰の細剣を抜くと、攻撃を防ぐ。

 パキィン! と硬質な音が響く。

 しかし伏竜の剣は火花を散らしながら鳳雛の剣を滑り上がってゆくと、鳳雛の首を一気に刎ねた。

 ザンッ!

 鳳雛の頭は離れた位置に転がり、立ったままの体からは血が噴き出していた。
 その体も、頭部を失ったことで、両足をよろよろと彷徨わせ、倒れる。
 目を見開いて転がった首の切り口から、どくどくと血が流れる様に、オレは見っともなく震えてしまう。

 伏竜は剣を振って血を弾くと、朱雀門派の奴らに告げた。

 「おい! 手前らの老大は死んだ! 道を開けろ!」

 しかし周囲の朱雀門派の面々は動じていなかった。
 ボスが死んだのに、動揺していない?
 それ所か、また伏竜に襲い掛かってきたのだ!

 伏竜はオレを庇いながら剣を振るう。
 片手は剣で術を弾き、もう片方の手で術を放って相殺する。
 素人のオレでもわかる。

 伏竜は、強い。

 この人数を相手にしても退く所か攻めに攻めている。

 だが、オレが足手纏いになってるから、自由に動けずにいるのだ。

 (オレがもっと、強かったら……!)

 そこで、ありえない声が響き渡った。

 「都給我住手(ドウ ゲイ ウォ ジューショウ)!(全員、手を止めろ!)」

 声の方向を見ると、自分の死体の傍に立つ、鳳雛が居たのだ。