夫ジョサイアは多くのものを恵まれていても、驕ったところなんてなく真面目な性格で、間に合わせの妻の私にだって、すごく優しい。

 行きがかり上で結婚することになった彼に、良い感情しか持てない私は、出来ればジョサイアには素晴らしい女性と結ばれて幸せになって欲しいと思う。

「僕もあまり詮索はしたくはありませんが、何処に行っていましたか?」

 馬車の中には、ピリピリとした空気が溢れていた。こんな風に圧を感じるほどに無表情のジョサイアは、私も初めて見る。

「……事業に使う農園を、見てきました。買ったばかりで結婚することになったので、心配で」

 私が手掛けている事業については彼に最初から言っていることだし、別に何の後ろ暗いことがある訳でもないのに、何故か緊張して声が震えてしまった。

「そうですか……誰かと会いましたか?」

 私はジョサイアの直球な質問を聞いて、ドキッとしてしまった。もしかして、オフィーリア様に会おうとしたことが、彼にバレしまっているのかもしれない。アメデオだって、この前に言っていたはずだ。ジョサイアは、既に権力者の一人なのだと。

「……会っていません」