「そうですよね。変なことを言ってしまって、申し訳ありません。僕だって、自分の立場はわかってます。ですが、レニエラ様は、どうして誰とも結婚することなく……その、自ら幸せになろうとは、思って居ないのですか?」

 カルムから思わぬことを質問されて、驚いている私をそのままに、広い農園の端に居た彼の父親に遠くから名前を呼ばれたので、彼は私に頭を下げて謝罪し慌てて走って去った。

 私は息をついて、広い農園の中を歩くことにした。日差しがぽかぽかと暖かいけど、やがてすぐに寒くなってしまうだろう。

 ……どうして、私が誰か良い人を探して、結婚して幸せになろうと思って居ないか、ですって?

 ああ。そうね。何故かしら。確かにカルムの言うとおり、私はこれから誰かと結婚して幸せになろうという気は薄いのかもしれない。

 多分、人生で初めて結婚を約束した男が、幼かった当時は、とっても優しかった記憶があるからかしらね。

 ほんの数年で、人は何もかも変わってしまうのだから、愛なんて最初から求めない方が良いのよ。