「まあ……深い事情があるのよ。彼には間に合わせの妻が、必要だっただけなの」

「色々と、大変なんですね……レニエラ様、離婚したらどうするんですか?」

 カルムが心配そうに聞いたけど、私は当初の予定通り独身で過ごすだけだ。

「え? 私は離婚して一人になったとしても、実業家として生きるわ。元々、そのつもりだったもの」

「……そうなんですか……それでは、そうなれば、僕と結婚しませんか?」

 カルムの緊張感のある表情、私はそれを見てこれはいけないと思い、明るくにっこりと微笑んだ。

「まあ……ふふっ……駄目よ。カルムには面倒な身分を持つ貴族の私より、きっと良い人が見つかるわ」

 幼い頃からずっと一緒に育ってきたカルムは、とても性格の良い子なのだ。こんな私なんかより、可愛くて優しい良いお嫁さんに、いつか出会えるはず。

 もしかして、婚約破棄されて、離婚されて……周囲からは、とても可哀想な女に見えるのかしら。

 ……私は別に一人でも、大丈夫なんだけど。結婚していても不幸な人は居るんだから、一人で生きていても、幸せな人は居るとわかって欲しいわ。