「はい! けど、最近レニエラ様がこちらに来てくれないので、もしかしたらこの事業計画自体がなくなるかもしれないと、父が心配していました。僕もレニエラ様はあのー……あの出来事があってから、結婚はされるおつもりはないと聞いていたので、驚きましたが……」

 ……ああ、そうよね。

 ドラジェ伯爵家から気心の知れた彼らを引き抜き、一生を左右するようなことをしてしまっているというのに、この事業計画自体、宙ぶらりんになってしまっている状態なんて、あまり良くないかもしれない。

「そうなのよね。ねえ……カルム。貴方には言っておくけど、結婚はしたんだけど、私は一年後に離婚するから、事業計画自体には何も変更はないわ。だから、心配しなくて良いから」

 こんな農園に部外者が入り込む訳はないけど、あまり聞こえの良い話ではないので、周囲を気にして声を潜めつつ私が言えば、カルムはすっとんきょうな驚いた声を出した。

「……え! そうなんですか?」