私たち夫婦はここひと月で、朝食時に合わせて数時間程度しか、まだまともに話せていないけど、それだけでもそうだとわかるくらいにジョサイアは真面目な人だもの。

 ……書類上とは言え、妻が居る身では、彼は動けないと思っているのかもしれない。

「けど、ジョサイアはそんな我がままを、なんでも聞いてしまうくらい大事にしていた彼女と、結婚するはずだったのよ。アメデオ。それだけ愛しているのなら、一度は気の迷いで逃げたにしても、間違いを犯した彼女を許そうとしたら?」

 ジョサイアは、この前まで親しく話したこともなかった私にだって、こんなにも優しい。

 今の私に、してくれるような……あれほどまでに大事にしていた彼女が、自分の元へ帰って来たいと言えば、許してくれるかもしれない。

「え。だから、そんな訳ないって……モーベット侯爵が、最終的に結婚したのは、姉さんだろう。その権利を自分で放棄したあの女のことなんて、姉さんはもう忘れて気にしなくて良いよ」

「……けど」

 いくら我がままな婚約者だったとは言え、あれだけのことを、普通にしてしまうなんて……それって、好きだからでしょう?