結婚式を挙げてから、ひと月経って、そろそろ新婚結婚生活も落ち着いただろうと、不肖の姉を心配して、嫁入り先のモーベット家まで、こうして訪ねて来てくれたのだ。

 このアメデオは頭が良過ぎるせいか、感情の制御が上手く、それゆえに幼い頃から何を考えているか見えにくい。

 けど、姉の私のことはいつも心配してくれていて、元婚約者に婚約破棄された時も「よく今まであの横暴に我慢したし、最後にやってやったね。よくやったよ。姉さん」と、ホールケーキをあいつの顔にぶつけたことを、たった一人だけ褒めてくれた。

 ちなみに、婚約破棄の顛末を聞いた両親は「もうこれで、レニエラは貴族から求婚されるなんてあり得なくなった」と、呆然として悲嘆にくれていたし、怒り狂ったアストリッド叔母様は元婚約者に刺客を送ろうと、驚く夫へと提案していた。

 つまり、私にとってこのアメデオは、唯一常に全面的に味方をしてくれる、とっても可愛い弟なのだ。

「そうでしょう? だけど、ジョサイアは彼女の要求があまりにも度が過ぎてておかしかったということに、気がついていないみたいなの! ……どうしてなのかしら?」