みるみる困った表情になったジョサイアは、故意ではなく妻の前で元婚約者の話を出してしまうことになり、これはどうしたものかと気を揉んでしまっているようだ。

「いいえ。別に気にしなくて、大丈夫よ。何年もの間、婚約者だったんだもの、ジョサイアが彼女のことを忘れられないのもわかるわ。気にしないで。私は……心得ているから」

 理解ある妻として私はにっこり微笑めば、ジョサイアは慌てて首を横に振った。

「……レニエラ。違うんだ。その……なんと言えば、良いのか。彼女は僕の仕事に関して、君のようにあまり理解があるとは言えなかったから」

「それって、きっとジョサイアと少しでも長く、一緒に居たかったのよ。それだけ、貴方のことが好きだったのね。なんだか、羨ましいわね……」

 私は愛し合っていた二人のこういうエピソードを聞いて、羨ましいと素直に思えた。

 ……私と元婚約者の関係とは、全然違う。

 今更、こんなことを思い出すのも癪なんだけど、ほんっとうに嫌な奴だったもの。