侯爵家の女主人としての仕事も、この先には離婚する予定の契約妻なのだから、あまり詳しく知らない方が良いだろうと勝手に忖度し、これまでずっと担当していた執事にそのまま任せていた。

 縁談が来て結婚式まで全力疾走していたかのような多忙の中で、投資している事業の準備も中断してしまっているし、ようやく落ち着いた今では、こっそりと買い取った農園へ様子を見に行きたいけれど、なかなかタイミングが見つからない。

 結婚式のために王都へやって来ていたジョサイアの両親は、アルベルト陛下の即位に合わせて息子に爵位を譲っていた。

 隠居の身である彼らは広い領地で悠々自適の生活を楽しんでいるらしく、新婚夫婦の邪魔は出来ないと、早々に領地へと帰って行った。

 そんなこんなで、週末であろうが無関係とばかりに休日なしの生活が続いているジョサイアは、結婚したばかりなのにすまないと、上司にあたる宰相閣下より謝罪を受け、ようやく休日を一日だけ貰うことが出来たらしい。

「まあ……良かったわ。本当に!大変そうだったもの」

 休みが取れたと唯一彼に会える朝食時から聞いた私は、心の底からしみじみとそう思った。