ジョサイアの水色の目が、やたらと近い。気がつけば、彼は耳元で囁き肌に吐息を感じるほどに距離が近かった。

 美形の男性がこんな至近距離に居て、胸が高鳴らなかったと言えば、それは嘘になってしまう。

 けど、もう私は何かに期待をして裏切られることは、もう二度とされたくない。もう二度と。

 ジョサイアは駆け落ちして逃げてしまった元婚約者を、とてもとても大事にしていたと噂で聞く。

 彼女のことが、本当に好きだったんだろう。

 もしかしたら、愛した相手に裏切られたジョサイアは寂しくて彼女が恋しくて、こうして成り行きで結婚した妻に、ひと時だけでも胸の傷を埋めて欲しいのかもしれない。

 それは、単なる逃避でしかない。いずれ彼は、本来自分が愛するに相応しい相手に気がつくはずだ。一時的な感情で動いたことに、後から後悔するだろう。

 そして、私はまた一人、孤独になってしまう。

 こうして、仮初の妻になることは、別に構わない。けど、ここから心を預けた相手に裏切られるなんて……きっと、耐えられないと思う。