「……ねえ。ジョサイア。貴方は私に対して何か罪悪感を持っているかもしれないけど、気にしなくて良いわ。時間なくどうしようもなかったことも、何もかも、理解しているから」

 置かれていたお洒落な水差しを持って、私は彼の分の冷たい水を用意した。酔っ払った様子のジョサイアは、それを一気に飲み干したので、私は苦笑し、再度水を入れた。

「……本当に、何もかも理解してくれている? レニエラ。君はこの結婚に対し、大きな誤解を持っているように僕は思う」

 顔を赤くしたジョサイアは大きく息を吐き、私を見つめた。きっと、お酒を飲み過ぎて感情的になっているんだわ。

「ええ。ジョサイア。ちゃんと理解しているわ。貴方には、間に合わせの結婚相手が必要だった。私だって過去に婚約破棄されて一度は結婚を諦めた身、ジョサイアの気持ちはわかっているわ」

「いいや、君はわかっていないと思う」

「あんなことがあって……私なんかと結婚することになり、お気の毒です。けど、以前に言った通り、好きでもない女と一生添い遂げる必要など、どこにもありません。私は弁(わきま)えているから」

 愛し合っていたという元婚約者が駆け落ちしたことを暗に示せば、やはり彼は表情を暗くした。

「……待ってください。ひとつお聞きしたいんですが、レニエラにとっては、結婚相手としての僕は不満ですか」

 何か不満を感じているとしたら、そちらなのではないかしら。だって、ジョサイアの整った顔には、いかにも気に入らないと言わんばかりに、不満そうな表情を浮かんでいた。

 そこで、私はジョサイアに対する言い方を間違えたかもしれないことに気がついた。