「それには、アルベルトに心底感謝しているよ。いくつも無理が通らなければ、レニエラをオフィーリアから花嫁に置き換えるなど、到底出来なかったからな」

「さっさと告白していれば、話が早かったものを……彼女は以前に、婚約破棄をされたと聞いているが。誰だったか……ああ……思い出した。ディレイニーの嫡男か……」

 自らの臣下として数多く居る貴族を把握しているアルベルトは、レニエラの元婚約者を考えて思い出したようだ。彼から見れば、ディレイニーが重要度が低いという意味だろう。

「……最低な男だ。婚約者を人前で辱めて、何の意味がある?」

 何度も何度も泣きそうになっていたレニエラを思い出す度に、腹が煮えくり返るような思いになった。

「そういう性癖を持つ者も居る。私は違うが、現にお前だってそんな彼女を見て自分が守らねばと庇護欲が湧いた訳だろう? だとしたら、相手もそう思っていたのではないか」

「……自分で泣かせている癖に、それを見て、彼女を守りたいと思うと?」

 ……僕にはまるで、それが理解が出来ない。では、彼女を泣かせなければ良いだけではないのか。