本当は隣国も早く纏めたいのに「長引かせろ出来るだけ長く」と、誰かから指示されているのだと……小さいとは言え立派な君主国家であるはずの隣国で、圧倒的な影響力を誇るとある豪商の仕業であると。

「……彼女の気が済むまでは、無理です。アルベルト陛下」

 僕だって、これはどうにかしたい。これをされてしまうと、自分だけの問題ではなくなる。今は港街で過ごしていると聞いたが、彼女と連絡を取ろうと手紙を出しても戻される。

 つまり、婚約者であった彼女と向き合うことなく、ないがしろにした挙げ句、自分が逃げるしかないという状況に持ち込んだ僕への嫌がらせで……それについては、何も話すつもりがないというオフィーリアの意志表示だ。

「お前。まあ、良い。良かったな。初恋の君と結婚出来て」

 アルベルトは幼い頃から嫌になるくらいに一緒に居て、君主と臣下ではあるが、数え切れないほどに喧嘩もしたし、何度も殴り合いに発展したこともある。

 彼が王族でさえなければ、誰と一緒に居ようが親しげに話せるような関係ではあった。