「はじめまして。レニエラです。侯爵様。お会いできて嬉しいです」

 ……僕も本当に、君に会えて嬉しい。

 顔合わせとして初めて間近で見たレニエラは、想像していた以上に可愛らしかった。

 僕はレニエラを知っているが、レニエラは僕を知らない。ここは完全に初対面なのだから、何かしら褒め言葉をまず言うべきなんだろうと思った。

 いつもなら特に何も考えずに、定番の褒め言葉に相手に合わせたお世辞が出て来るはずの口は、初恋の人に縁談を申し込んだという夢のような状況への緊張からか上手く動かない。

 このままでは、変に思われてしまうと思えば思うほどに、言葉は出て来ない。

 二人きりになっても言葉少なな僕に、レニエラは不思議そうな表情だった。