「ええ! それで構いませんわ。私は以前婚約破棄されてから、夫に頼らずとも独身で生きるために、これまで着々と準備を進めてきました。モーベット侯爵も、抜けられないしがらみがあって、新婦を急遽変更しての結婚式だなんて……とてもお気の毒なことでしたが、ほとぼりが冷めてからは、お好きな人生を歩まれたら良いわ」

「しかし……これは、何と説明すれば良いのか……どうか、僕の話を聞いてください。レニエラ嬢」

「私と離婚することに対し、罪悪感などは要りません。それに、離婚後についてはお気になさらず。それなりに、勝算はありますので。モーベット侯爵は愛していた婚約者の方に、結婚式直前で去られて、本当に大変だったことと思います。私は一人でも、生きていけますから」

 私がこれから展開しようと思っている事業の計画は、ほぼ出来ていて、あとは商品化してからのスタートを切るだけだ。もし、成功した事業家になれば、元貴族令嬢の肩書なんて、特に気にもされないだろう。

 婚約破棄された過去も、すべてなかったことになる。