可愛がってくれるアストリッド叔母様だって、夫を尻に敷いているタイプの女性だし、父も母を大事にしている……家族の影響を受けて、女性は大事にされるものという考えが根付いていた。

 そういう意味では、私はこのショーンに何を言われてもされても、「何をするのよ!」と彼にちゃんと言い返していた。やられっぱなし、泣かされっぱなしになんて、ならずに。

 ……ああ。私は本当に……ひどい勘違いをしていたんだわ。

 ショーンは私のことを、同じ人間として認識していない。

 まだ、相性が合わずに相手を好きになれないのなら、理解は出来る。けれど、今こうして誘拐しているショーンは私のことなんて全く好きではないわ。

 ただ、幼い頃から、自分のもので……誰かに取られたくなかっただけ。

「……私の自尊心を折るために? だから、あんなことをしたの?」

 私はそれを、確認のつもりで聞いた。

 ショーンは言葉を使わずに、何度か頷いてそれを肯定した。私の方なんて、見てもいない。

 本当であれば、私はここで彼を嫌いになるところなのかもしれない。それとも、悲しい気持ちにされて憎んでしまう?