「……ねえ。ショーン。私へ婚約破棄を、一年前に言い出したでしょう?」

「……ああ」

 馬車の轍の音だけが聞こえる中の、私の質問に投げやりに答えたショーンは、私が居る方を向く気はないようだ……ううん。そうよ。オフィーリア様だって怒っていたように、自分と向き合うことをしない人となんて、一生を添い遂げる結婚するのは無理だわ。

 だって、話し合う気も無ければ、どんな事態でも摺り合わせが出来ない。

「どうして、あんなことをしたの? 婚約を継続するくらいなら……婚約破棄なんて、しなければ良かったのに」

 そうよ。今になって私を連れて逃げるくらいなら、あんなことをしなければ良かったのに。

 ……そうしたら、今頃は結婚適齢期の私たちは、結婚式の準備をしていたはずだわ。

「うるさいな! あの時は捨てられそうになったお前が、俺に縋って来るところだろう!」

「……え?」

 あまりにあり得ないことを言ったショーンに、私は口をぽかんと開けて頭が真っ白になった。

 そんな私の反応がショーンにとっては意外だったのか、彼は私の方へ向き直り、いかにも気に入らないといった様子で言った。