「騙したのね。ショーン」

 私はそれとなく周囲を見回し、自分が今居る状況を素早く確認した。

 二人が乗っている馬車は走っていて、かなりの速度が出ているみたい。ショーンには私は何も出来ないと見くびられているようで、手も足も縛られてはいない。

 けれど、確かにこの速度の馬車からは、絶対飛び降りられないわ。

「……レニエラ。お前。良い気になるなよ。運が良く結婚出来たかもしれないが、お前は俺が居ないと何も出来ない駄目な人間だ。これからは、俺の言うことだけ聞いていれば良い」