「あいつはそれは痴話喧嘩の慰謝料くらいに、思って居たんじゃないの。だって、別に姉さんのことを好きだし、姉さんがまだ好きでいてくれていると勘違いして居れば、なんでも許してくれると思ってしまうもんだしさ」

「何言っているのかしら……あんなことをされて、好きでいられる人は聖人だと思うわ」

「否定しないよ。けど、姉さんはその直前まで、辛い我慢を強いられても我慢していた訳だし」

「……ショーンはディレイニー家に、帰ったのかしら? 私……直接、話をしに行こうかしら?」

 私は立ち上がって、両手をぎゅっと握りしめた。

 一体何を考えているのかはわからないけど、父親のディレイニー侯爵は何をしているの?

 現在の私の夫、ジョサイアは陛下の側近で宰相補佐だ……もし、何かあればショーンだけの問題では、終わらなくなってしまうのに。

「ああ……それは、止めなよ。とにかく……動くのなら、義兄さんに相談してからだよ。忘れたの? 姉さんはもう既に、モーベット侯爵家の一員なんだから」

 アメデオはとにかくジョサイアの話を聞いてからだと宥めたので、私はとりあえず腰を落ち着けた。