「好きだったことは、否定はしないわ。けど……もし、一度嫌いになったら、再度好きになるなんて稀だと思うわ」

 私は冷静に、そう思った。

 まだショーンがずっと近くに居て、心底反省した姿を見られたのなら別だけど……一年間離れていた今では、あの人を全く好きではないと言い切れる。

 私が心底思ったことを言えば、アメデオは眼鏡を外してため息をついた。

「あの馬鹿が、そこまでのことを考えられているとは思えないよ。婚約者だった姉さんが好きで居てくれることが、当たり前だと思い込んでいた末路がこれだ。信じられないし、婚約不履行なんて今更訴えてどうなるんだ」

 アメデオは今の状況を振り返り、困った顔になっていたけど、私もそう思う。

 婚約不履行って……私はもう既にジョサイアと結婚しているんだから、それを言ったところで、どうにもならないはずなのに。

「婚約不履行って……そうよ! あの慰謝料は? 私は農園を購入した資金の……」

 アストリッド叔母様が割と高額な慰謝料をぶん取ったんだけど、あれは一体なんのつもりだったの?