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「姉さん。おかえり」

 邸へ帰って来た私は、そこに学生服姿の弟アメデオが居て驚いた。

「……あら! アメデオ。どうしたの? 先に連絡をくれていたら、邸で待っていたのに」

「いや、姉の嫁入り先とは言え、先触れもなくごめん。僕は実はジョサイア義兄さんに伝えなければならない事があって、ここへ急ぎで来たんだ」

「急ぎ……?」

 私は緊張感を隠せない表情をした弟アメデオの、慎重な言いようが不思議になって首を傾げた。

 それとなく時計を確認すれば、この子は通常ならば、学校で授業を受けている時間のはずだった。

 制服を着ているということは、学校に居たはずなのに、こちらへと駆けつけたのかしら?

 そんなにも急ぎの用件がまったく見当もつかずに、私は何があったのだろうと不安がよぎった。

「仕事しているはずの城にも行ったんだけど、仕事がようやく片付いた義兄さんは、もう帰宅したと聞いてはいる……今はどこかに寄っているのかもしれないけど、闇雲に探すよりここで待っていた方が良さそうだし、待たせてもらうよ」

「あ……そうよね。そうだったわ」