首をぶんぶんと横に振って、慌てて否定した私に、カルムは意味ありげに微笑んだ。

「お嬢様は、本当に嘘が下手ですからね。顔が自然とほころんで、わかりやすいですよ。今結婚している人と、上手くいったりしたんですか?」

 あ……そうだ。このカルムには一年後に、離婚するって言ってあった。けど、今の状況では、きっと継続することになると思う。

「……実は、私が結婚した人は今まで思っていた人とは、全然違うみたいなの。カルム」

 嫌味でもなくにこにこと微笑むカルムは、それはこの前とは話が違うではないかとは言わなかった。

「それは、良かったです! ……レニエラ様は、ご結婚された方を好きになったんですね?」

 不意に思いもしなかったことを問われて、私は戸惑った。

「え……好き? 好きなのかしら?」

 私は昨夜、ジョサイアからの告白を受け、それについては何も答えてはいない。

 ……好き? 確かに、私はジョサイアのことは、好きだとは思う。有能だし真面目で優しくて驕ったところもなく、美形侯爵と名高い通りに姿も良い。

 彼と両想いになれるなんて、私はつい昨日まで思ってもいなかった。