彼の水色の目があまりに真剣だったから、私はここでどう言うべきか迷った。

 ここでは、嘘はつけない。二人の関係を、先へ進めたいと思うなら、彼と向き合わなければ。

 私は……傷ついている?

 ええ。きっと彼の言う通り、私は傷ついているだろう。けど、それは彼の想像しているようなことではなくって……。

「私が傷ついたのは、別に元婚約者に婚約破棄されたことではなくて……その時に当たり前に持っていたものを、すべて失ってしまったから。けど、今は代わりのものを、この手に既に持っている。けど、たまに思い出すの……何も知らずに居た、あの頃の自分を」

 いまだに消せない想いがこぼれるようにして涙があふれたけど、それは切ない表情になったジョサイアが、さりげなくハンカチを出して拭ってくれた。

「……彼のことは、好きだった?」

 ジョサイアは確認するように聞いたので、私は慌てて首を横に振った。

「まさか! 全然、好きではなかったわ。大嫌いだった。けれど、彼と結婚するとは思って居た。だって……私たち何年も一緒にいた、婚約者同士だったもの」