このまま黙ったままでいると、大変なことになってしまうと、私は慌てて二人の会話に口を挟んだ。

「何故だ。ブランシュ。君だって、そんなことを言われて、不快だっただろう。それに、あいつは実際のところ死刑になっていてもおかしくない男だ。ブランシュが気に掛ける価値はない」

「けれど……だからと言って、殺してはいけません……アーロン。落ち着いてくださいっ……」

 私は彼の名前を自然に呼んだことに気がついて、手で口を覆ったけれど、アーロンは嬉しそうに微笑んでくれて、私は心臓が止まりそうになった。

 血煙の軍神と呼ばれるまでに、とても恐ろしい男性なのに、それなのに、嬉しそうな笑顔がとても可愛かったから。

「旦那様……?」

「……アーロンで良い。ブランシュ、本当に悪かった。再婚可能になるまでの一年間は君には誰も手が出せまいと思っていたが、まさかあの弟がこの邸へ舞い戻って来るとは、夢にも思わなかった」

「あ……あの……」

「もう何の心配もない。大丈夫だ。とりあえず、ブランシュはここで休んでいてくれ。俺は城に行かなければならない。後から、ゆっくり話をしよう」

 私の手を持ってアーロンは目を合わせ、私は緊張で声が出せずにただ頷くだけしか出来なかった。