けれど、アーロンもクウェンティンも特に動揺しない様子で話を先へと進めて行く。

「……ヒルデガード様が奥様に再婚を迫っていた時も、帰ってきたら問答無用で殺せと旦那様に指示を頂いておればと、とても後悔をしました」

「……なんだと? ヒルデガードが、ブランシュに再婚を迫っていただと? それは、事実なのか?」

「はい。亡くなった兄の財産は、美しい妻も、すべて俺のものだと言っておりました」

 ……確かにヒルデガードは、そう言っていた。兄はこうして生きていて、弟の彼の出る幕は無くなってしまった訳だけど。

 クウェンティンの言葉の後、私は部屋の温度が何度か下がったような気がした。

 淡々と状況説明をしたクウェンティンに、アーロンは感情を見せずに頷いた。

「よし。わかった。ヒルデガードを追え。殺そう」

「御意」

 アーロンは血の繋がった実の弟を殺そうと指示して、クウェンティンは当たり前のように頷いた。

 うっ……嘘でしょう!

「まっ……待ってください! その程度で弟を殺すなんて、いけません!」