恥ずかしくて目を逸らし、勝手に高鳴る胸を押さえた。

 どうして、彼が近くに居ると、こんなにも胸がドキドキするの……しめつけられるように苦しい……。

 アーロンは近寄って私のベッドに座り、直立不動で立っているクウェンティンに質問をした。

「ちょうど良かった。お前に聞きたかったことがあるんだ……何故、ヒルデガードを殺さなかった? ブランシュに危害を加えれば、誰でも殺して良いと指示していたはずだ」

 え? ……殺しても良いですって?

 私は夫が言ったことを信じられなくて、目を見開いてしまった。

「ですが、奥様に止められました。旦那様より、奥様の意向を最優先にせよとお聞きしておりましたので」

「……では何故、ヒルデガードや偽の愛人が入り込んだ時点で、ブランシュに俺が帰って来ると言わなかった? これは、緊急事態に匹敵する事態だ」

 アーロンが不機嫌そうにそう問えば、クウェンティンは不思議そうに答えた。

「僕は旦那様から奥様を、一年間必ず傷一つなく守るように、意向を最優先するようにとしか、指示されておりません」

「いや、だから……そこは臨機応変にだな……」