相手が十万ならば、後は多数の援軍を待つ。近隣の貴族たちも、慌てて出て来るはずだ。そこまでの時間さえ稼げれば、なんとかなる。

 なんとかなる……ではなく、なんとかするが、言葉としては正しいけれども。

「閣下……勝てると、思っていらっしゃいますか」

 しんと静まり返った中で、副官ジェームスの言葉に、俺は笑みを見せ鷹揚に頷いた。

「それは、心配するな。俺の作戦がすべて、上手く行けば勝てる」

「おお……!」

 上手く行く可能性は低いことは伏せていても、嘘ではない。

「……良いか。この国を守るために、要らぬ物などすべて擲つ必要がある。正々堂々として敗れるとすれば、汚い手を使ってでも勝つ。それには、お前たちの協力が不可欠になる。誰かがしくじれば、全員が死ぬと思え。これは演習ではない。生と死が隣り合わせの実戦だ」

 部下たちの目の色が変わり、俺はこれならば勝てるかもしれないと思った。

 すべては、ここからだ。

 心中にある焦りなど、司令官たる俺だけは、絶対に部下相手に見せてはいけない。